7 / 10

第7話

 ある晴れた日の朝。  ここに来てから裏の出入り口ばかり使っていた清明は、初めてこの家の門の前に立っていた。  怪我の具合もすっかり良くなり、もう大丈夫だろうと先生からのお墨付きももらって、清明がここを離れる日が訪れた。  清明の隣で、春雷が作ってくれた布の袋を頭に被ってクロが尻尾を振っている。  ボロ布に穴があいているだけの被り物だが、二人とも器用ではないので、とりあえずはこれで良しということになった。 「これ、漢方を入れておいた。しばらくは飲むんだぞ」  春雷は門まで見送りにきてくれて、小包みを清明に手渡した。 「感謝する。本当に世話になった」 「クロも元気でな」  清明はもともと荷物をほとんど持っておらず、小包を受け取って懐に仕舞った。 「先ほど玄天先生に、礼はいらん!と念を押されてしまったが、ひと月も世話になってしまったので、後日改めて伺わせてもらう」 「お前もたいがい頑固だな」 「しかし……」  春雷は呆れながらも笑っている。 「気をつけて帰れよ」 「ああ、また来る」 「怪我が悪化した時以外は来なくていいぞ!」  改めて礼を言い、清明とクロは老医師の家を後にした。

ともだちにシェアしよう!