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第八章③ ♡
一緒に入るならシャワーを浴びてもいいだなんて、我ながら随分意地悪な言い方をした。薫にそんなことを決める権限はない。けれど、肇は案外素直に応じてくれた。バスタイムを共にするなんて、初めてのことだ。
「っ、くそ……! 風呂入るんじゃなかったのかよっ」
そして今、肇は浴室の鏡に手をつき、悶えている。
「入ってるじゃん?」
「ちっ、げぇよ! 風呂!」
「お風呂はもう入ったでしょ。汗流してさっぱりしたんだから、ここ弄らせてよ。おねがい」
「てめ、俺が何でも許すと思ったらっ……」
ぐり、と指先で前立腺を擦ると、肇は声もなくビクビクと身悶えた。
「ぅ、は♡ くそ……んん゛」
「一緒にお風呂って、そういうことじゃん? 肇も期待してたでしょ」
「して、ねぇっ」
「だってさっき、お風呂の中で僕のちんちん触ってきたじゃん。てっきり誘ってるんだと思ってた」
「あれはっ……てめぇが触ってほしそうにしてっから……!」
「だから触ってくれたんだ。優しいね。じゃ、これはそのお礼ってことで」
前立腺をぐりぐり捏ね回す。肇はいやいやと髪を振り乱しながら、快楽を求めて尻を突き出し、いやらしくくねらせた。
「んぁ゛っ、あ゛、やめ、そこばっか、あ゛っ」
「気持ちい? かわいーね。一生懸命僕の指食べてる」
「う゛、っせ、やめ゛、あぅ゛、あ、だめだ、だめっ」
「イキそ? いいよ。いっぱい出しな」
「ぃ゛ぐ、い、ひぅ゛……っ、ん゛ぅぅ゛――っ!」
びゅくびゅくと白濁が噴き出した。勢いよく飛んで、ピカピカに磨かれた鏡をべったり汚した。
射精に合わせ、ナカもビクビクと痙攣する。薫の指をきつく食い締めて離さない。くぱ、と二本の指で強引に押し広げると、ヒクヒクと収縮する果肉が蠢いた。赤く熟れて、とろりと潤み、どんな味がするだろうかと薫の想像を掻き立てる。
達する瞬間や達した直後の秘部の様子を間近に見られることなど滅多にない。まさかこんなにもいやらしい姿で雄を誘っていたなんて、思いもしなかった。甘い匂いで蝶々や蜜蜂を呼び寄せる野花のようだ。
「んぁ゛ぁ!? あっ、まだ……っ!」
肇は激しく仰け反る。薫は引き締まった腰を掴み、奥まで一息に貫いた。挿れただけで、肇は再び白濁を散らした。
「あ゛っ、はぁ゛♡ くそ、やすませろ……っ」
「む~り。今挿れたばっかだよ」
ガツガツと突き上げる。肇の声が裏返り、浴室に反響する。真っ赤に火照った蕩け顔が、精液の飛んだ鏡に映っているけれど、肇の目は虚ろで視線が定まらず、自分のその恥ずかしい姿にも気付いていないようだった。
「ねぇ。ね、よく見てよ」
「んぁ……?」
薫は肇を背後から抱きすくめ、顎に手を添えて正面を向かせた。
「すご~くさ、エッチじゃない?」
「あ……っ?」
「こ~んなとろとろになっちゃって。涎なんか垂らしちゃってさ。あとほら、さっき肇が出した精子、ちょうど口元に飛んでてさ、セルフ顔射したみたいだよね。エロすぎでしょ」
耳たぶを齧り、甘く息を吹き込む。肇は鏡に映った己のいやらしい姿を目の当たりにして、ガクガクと膝を震わせた。
「あっ、や……みるな……っ」
「見るに決まってるでしょ。エッチすぎるもん!」
どちゅん、と勢いよく奥を貫いた。肇は音にならない嬌声を上げて悶えた。
「あぁ゛♡ あっ♡ やだっ、みんなっ!」
「見られたくないの? 恥ずかしい?」
「いやだっ、あ♡ こんな、んぁ゛っ♡」
「でも気持ちいでしょ? ナカきゅんきゅんしてるし。イッてるよね?」
「ぃ゛、ひっ♡ いっでぅ゛、からぁ♡ とまれってぇ゛っ」
「やっぱりイッてるよね。よかったぁ」
「や゛、ぁ゛♡ もうむりっ、むり゛っ」
「うん。僕もそろそろ限界かも……」
薫は、ビクビクと痙攣する肇の躰をきつく抱きしめ、荒々しく腰を打ち付けた。逃げ出すことも目を背けることも許さない。肇の善がり狂う声と、濡れた肌のぶつかり合う音が反響する。
「そろそろ……っ……!」
射精の瞬間、薫は自身を引き抜いた。潤んだ果肉が切なげに吸い付く。花弁が捲れて追い縋る。それらを振り切って、薫は自身を抜き去った。そして、肇の双丘目掛けて精を放った。
鏡の中の肇は、何が起きたのか分からないというような、きょとんとした顔をしていた。そんな表情もかわいい。薫は精液を肇の尻に塗り付けた。そんな些細な刺激も、肇は敏感に感じ取る。
「おま、っ……なんで……」
「なんでって? ナカにほしかったの?」
「っ……」
薫が意地悪な訊き方をすると、肇は悔しそうに口を噤んだ。ぽっかりと空いた穴は寂しそうに収縮している。躰の方が正直だ。
「お風呂出てからもっかいしよ。さすがにのぼせちゃった」
湯気が立つほど火照った肌を撫でられて、肇は期待に喉を鳴らした。
水滴もろくに拭かないまま、寝室になだれ込んだ。普段真純と三人で川の字になって寝ている布団で、二人は互いの熱を貪った。風呂場であんなにしたのに、まだ足りない。
「こっち向きでやれ」
肇は大胆に足を開く。
「キスハメしろ」
「好きだね。いいよ」
正常位で躰を繋げた。舌を絡ませ唾液を吸いながら激しく抱き合う。じっとりと汗ばんだ肌が擦れ合い、その刺激すらも快感になる。
「あ゛ぁ……♡ んっ、は、ぁあ゛っ!」
肇は濡れた黒髪を乱して喘ぐ。透明な雫がぱたぱたと舞い散る。薫の腰に足を巻き付けてしがみつき、自らも腰をくねらせて快楽を追う。
「はぁ゛、あ♡ もっと、もっとっ!」
「ここ好き? 前立腺」
「いぎっ♡ ぃ゛、おく、もっと……っ!」
「全部好きなんだ。気持ちいね」
「か、ぉ゛……かおる、っ」
「うん。僕もすごくいいよ」
「かぉ……んぅ゛♡ かおる……ぅ」
途切れ途切れに喘ぎながら、健気に名前を呼んでくれる。薫は嬉しくなって、一層激しく腰を振るった。
「好き。好きだよ、肇。もっと魅せて。聴かせて。全部教えて」
「かお、ぅ゛……♡ もっ、なか……なかに……っ!」
「うん。一緒にイこうね」
頭の中はほとんど酩酊状態だ。ひたすらに絶頂だけを目指して、がむしゃらに腰を振りたくった。ねっとりと絡み付く肉襞を掻き分けて最奥を貫き、薫は情欲の果てを見た。
「お゛っっ」
肇が酷い声で喘ぐ。ナカがひどく痙攣する。搾り取るように激しくうねる。途端、ぷしゃっ、と透明な汁が弾けた。まるで噴水のように噴き出した。肇はガクガクと腰を跳ね、雫を撒き散らしながらイキ続けた。
「あ゛っ♡ や゛、んぁ゛、っあ゛♡」
「すご、これが潮吹き……」
薫が感動して呟くと、肇は涙を散らして悶える。いや、涙ではないかもしれない。顔まで潮が飛んでいるのかも。
「ぅ、う゛……いやだ、ぁ……っ」
「なんで。気持ちよかったんでしょ?」
「よすぎ、て、おかしくなるっ……♡」
薫がほんの少しでも動こうものなら、肇はビクビクと痙攣する。敏感になりすぎた躰にとって、ほんの僅かな刺激でさえも暴力的な快感になる。
「も、ぁ……♡ むりだ、むり……っ」
薫が動かなくたって、肇は勝手に快楽を拾い上げる。呼吸し、唾を飲み込む行為にさえ、肇は快感を覚えている。途切れ途切れにか細く喘ぎながら、小刻みに震えている。
「かおるぅ……?」
愉悦に溶けた黒い瞳。そこに映るのは、獰猛な獣の姿。薫は肇の手首を優しく押さえ付けると、再び奥を貫いた。
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