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8話・手慣れた口淫 *
「やはり男に抵抗があるんじゃないか?」
「そんなことないっす」
過去の俺は男を恋愛対象として意識したことも欲情したこともなかった。実際、参考にするために観たゲイ向けAVではいまいち反応しなかった。
だが、伊咲センパイは着衣姿のままでも俺からみれば十分エロいと思う。性別なんか関係なくて、好きな人だから興奮するのだ。
「でも、反応していない」
伊咲センパイが俺の股間を見下ろして呟く。
伏せられた目はどこか悲しそうだ。
「……ほら、わかっただろう。やはり君の想いは気の迷いだよ。交際する前にわかって良かったね、獅堂くん」
まるで最初からわかっていたみたいな態度に、俺は思わず「は?」と声を上げた。
「なんすかソレ」
「実際そうじゃないか」
はぁ~~???
恥ずかしいくらいバキバキでしたけど?
今は変な噂を思い出して萎えただけですけど?
ていうか、どうもおかしい。
今日、彼は何度『やっぱりやめるか』とか『やはり抵抗があるんだろう』と口にした?
俺を諦めさせるためにわざとこんな真似をしたのだとしたら、どうして悲しそうな顔をする?
「ねえ伊咲センパイ。俺、男は初めてなんすよ。だから教えてください。どうしたらいいか」
俺の言葉に、伊咲センパイが目を見開いた。続いて、綺麗な眉が困ったようにハの字になる。
「続ける気か?」
「やめたくないっす」
「……はあ。わかったよ」
伊咲センパイはため息をついてから俺の股間に手を伸ばしてきた。長く細い指にするりと撫でられ、鎮まっていた股間が再び熱を持つ。
「ほら、勃つでしょ」
「触られて反応しただけだろう」
ちょっと触られただけでズボンの生地を押し上げるほど大きくなった。前を寛げ、俺のボクサーパンツに手をかけて一気に引き下ろす。勢い良く飛び出したものを見て、伊咲センパイが目を丸くした。
「わ、おっきい」
「ありがとうございます……?」
完全に勃ちあがった状態をまじまじと見られ、羞恥で顔をそらす。彼の綺麗な手が俺を掴んで軽く握り、親指の腹で先端を弄る。期待で溢れた先走りが滑りと快感をもたらした。直接的な刺激にびくんと腰が跳ねる。
「せっかく来てもらったし、抜いてあげるよ」
「ぬ、抜くって……あっ」
なにをする気かと問おうとした途端、熱い粘膜に先端が包まれる。伊咲センパイが俺のものを口に含んだのだ。まさかそんなことをされるとは思ってもおらず困惑していると、更に深く咥 え込まれる。じゅる、と時折強く吸われ、息が荒くなった。快楽に負け「あ、あ、」と情けない声を上げてしまう。
伊咲センパイ、フェラうまい。すげえ慣れてる感じがする。ただ咥えるだけじゃない。舌が裏筋の敏感なところを舐め上げてくるし、口の中に入りきらなかった部分は手で扱 いてくれる。何より視覚的な刺激がヤバい。俺の股間に顔を埋めて舐めている伊咲センパイの姿が扇情的で色っぽくて、眺めているだけでイキそうになった。
「あの、俺、もう」
「いいよ、出して」
許可が出たのとほぼ同時に果てた。
……伊咲センパイの口の中に。
すぐに我にかえり、慌ててベッド脇にあったティッシュの箱を差し出す。ところが、ティッシュは使われることはなかった。なんと、彼は俺が出した精液をそのまま飲んでしまったのだ。
「な、なんで飲んだんすかーー!?」
「ダメだった?」
「全然ダメじゃないですけど!」
心底不思議そうに首を傾げる姿に、俺はすっかり動転してしまった。
やはり伊咲センパイは噂の通り男を取っ替え引っ換えしていたのか。そうでなければ、いきなりフェラした上に飲ザーなんて出来るはずがない。なんだかショックだ。誰かに仕込まれたに違いない。俺以外の男がこの人に触 れ、いかがわしいことをしていた証だ。
「さ、スッキリしただろう。早く服を着て帰れ」
もう終わりと言わんばかりに身体を離して自分の服を探す後ろ姿に、俺は手を伸ばした。背中を押し、そのままベッドにうつ伏せに倒す。
「獅堂くん、なにを」
抗議されたが聞いてやる気はない。
「今日はセックスするんでしょ?」
「え、でも、君はもう」
「あれくらいで終わるわけないじゃないすか」
うつ伏せ状態の伊咲センパイの上に乗り、太ももに股間を押し当てると「え、なんで?」と戸惑う声が聞こえた。
先ほどフェラで抜いてもらったはずの俺のものは少しも萎えることなくガチガチに固いままだった。
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