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13話・両想いセックス *

 馴染むのを待ってから腰を動かしてみた。抜ける寸前まで引いてから、さっきより少し奥まで進む。何度か繰り返していると、伊咲センパイが急に息を詰まらせた。 「うぁ、そっ、そこ」 「痛い?」 「ううん、すこしくるしい、だけ」  いつのまにか、シーツを握っていた手が俺の肩にしがみついている。動きに合わせて小さく喘ぐ姿が可愛くて、そのまま顔を寄せてキスをした。すると、必然的に身体が密着してしまい、ぐぐっと奥まで入り込んでしまう。 「んぐ」  一瞬、伊咲センパイの身体がこわばった。たぶん苦しいのだろう。でも、ようやく全部が入り切った俺には彼を気遣う余裕がなかった。せめて動きだけは荒くならないようにと思いながらも、目先の快楽に負けて腰を強く打ち付けてしまう。 「っく、あっ、ま、待って、獅堂くん」  顔を離して制止しようとする伊咲センパイを再びキスで黙らせた。逃げられないように片手で後頭部を抱え、もう片方の手で細い腰を掴む。唇の隙間から漏れ出る吐息もすべて喰らい尽くすように貪った。 「んん、っふ、……~~ッ!」  そのうち、伊咲センパイの身体が小刻みに震え始めた。同時に体内がキツく締まり、刺激に耐えられなかった俺はゴムの中に大量の精を吐き出した。荒い呼吸がある程度治まってから、ずるりと引き抜く。 「すんません、我慢できなくて」 「……ん」  重くなったゴムを外して結んでゴミ箱に捨ててから向き直る。伊咲センパイはベッドの上で仰向けに転がったまま放心していた。彼の股間は射精をした形跡はなく、ぐったりと萎えている。  しまった、自分の快楽だけを追い求めて先に果ててしまうとは。 「わああ、俺だけイッてすんません!」  せめて気持ちよくなってもらおうと、慌てて伊咲センパイの股間に手を伸ばした。しかし、触れる前に叩き落とされてしまう。 「ば、ばか。今は触るな!」 「えっ、でも、まだイッてないっすよね?」  ()りずに再度手を伸ばす。下腹に俺の指先が触れた途端、伊咲センパイがびくんと腰を跳ねさせた。すぐに身体をくの字に曲げ、俺から下腹部を守ろうとする。 「ちゃんとイッた、から、触るな」  え、それってどういうこと?  もしかして、中イキしたって意味?  俺、ちゃんと先輩を気持ちよくできた? 「い、伊咲センパイぃ~っ!」  感極まって抱きつくと、悲鳴をあげてまた身体を震わせた。まだ快感の余韻が残っていたらしい。嬉しい。嬉し過ぎてまた勃ってしまった。再び元気になった俺の股間に気付き、伊咲センパイはあきれたように苦笑いを浮かべている。 「もう一回、する?」 「いいんすか!?」 「いいよ。ぼ、僕も気持ち良かったし」 「やったー!」  二ラウンド目のため自分のリュックから新しいゴムを取り出そうとする俺を先輩が止めた。 「ゴムなら僕も用意してるから」  そう言いながら、伊咲センパイはベッド傍に置かれたナイトテーブルの引き出しを開けた。中にはコンドームの箱やローションのボトルが入っている。それと、見慣れぬ形状の物体がいくつか。 「先輩、コレなんすか」 「お尻を拡張するためのプラグだよ」 「拡張? プラグ?」 「そう。これを入れておくと穴が開きやすくなるんだ。この一週間ずっと入れてて」  まるで新しい教材を紹介するかのように淡々と説明してくれる伊咲センパイを見ながら、俺の思考はぐるぐるに渦巻いていた。  つまり、俺とのセックスを円滑に行なうためにこんなことまでしてくれてたってことだ。ゴムもローションもプラグも自分で用意して。  まさか大学にいる間ずっとプラグが尻に入っていた?  今日中庭で会った時にベンチに座ってなかった理由はそれか。何食わぬ顔で俺と会話しながら、こんなものを入れていたのか。  なにそれ、エロい。 「もしかして、俺かなり好かれてます?」 「何を言ってるんだ。お試しとはいえ、好きでもない相手に抱かれたいなんて思うわけがないだろう」 「はあ、もう。なんなんすかアンタは……!」  抱きしめながら、腕の中にいる可愛い恋人を一生大事にしようと俺は誓った。  そんで、今日はとことん抱き潰すと決めた。

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