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第3話
「ん…あ…ぁ…」
眉間に皺を寄せながら自身を扱き、真は誰に聞かせるでもない甘い吐息を吐いた。
逆に言えば誰も聞いてないから近所迷惑にならないくらいのボリュームでなら遠慮なく喘いでもいい。
一人ならではの大胆さで大きく脚を開き腰を捩って顎をあげ…思いつく限り淫らなポーズをとった。
「ン…!」
加速度的に興奮度は増しそろそろフィニッシュを迎えたい。
「…もっと…欲し…」
内膜に圧をかけるように離れていた膝を近づけると胎に埋まったモノが刺激する位置がズレて絶妙な力加減で粘膜の内側からまた違った快感を与えてくる。
「ん…はぁ…ぁ…」
堪らず閉じていたヒザを再び大きく開き腰をゆらゆらと揺すった。
『何だよコレ!挿れてるだけなのにじっとしても動いても気持ちいい!』
初めての場合は異物感が拭いきれず気持ちよくなれる事は難しいのだとどのサイトにも書いてあったのに…真の体は素直に快感を拾っている。
『もしかして…俺って才能アリ寄りのアリ?』
初心者なのにこの感じ方…。
『ヤバい…癖になったらどうしよう!アソコに挿れるのさえ頑張れば… …ん?』
そこで真はある重大な事実に気がついた。
『頑張ればって…俺…自分で挿れた?』
慌てて記憶を辿ってみると同衾したはずのローションが見つからず確か『脳内シュミレーション』に移行した…はず。
「んん?ローション見つかったっけ?」
処女の自分がローション無くしてそこにブツを挿れる事はほぼ不可能だろうし、そもそもベッドを降りて机の上に置いたはずのソレを取りに行った記憶が…無い…。
「寝ぼけてる…かな…」
だって余計な事を考えたく無くなる程こんなに気持ちいい。
きっと自分でテーブルの上のモノを取って、ローションを馴染ませて上手く挿入したのだろう。
それしか考えられない。
いつの間にかカーテンの隙間からは光が差し込んでいてとっくに夜は開け朝だか昼だかになっていた。
真は寝転んだ状態のまま手を伸ばしてカーテンを引っ張り光を部屋に取り込み壁に掛けてあるとけいを見上げた。
「…何時…?」
「マコちゃん」
「ひぇ!!」
不意に自分の他にだれもいないはずの室内に男の声。
ビックリし過ぎてベッドに横たえていた体が軽く十センチ跳ねたのは間違いない。
「だ、だ、だ…誰?」
上半身を中途半端に起こし掛け布団を胸にかき抱いて声のする方を向けば明るくなった室内、ベッドのすぐ側に男がいた。
『ひぇ〜気づかなかった〜!』
ほんのりた頬を赤らめた男は正座をしてこっちを見ている風だが真の足の方のベッドの下にいるのに視線が真と並ぶ位置にある所をみるとずいぶん上背があるようだ。
「驚かせて、ごめんなさい」
しょんぼりとした大型犬をイメージさせる姿には見覚えがあった。
最後に見た時はもう少し…いや、だいぶ小さかったような気がするが…間違いない。
「え…と…翼?」
「…うん…」
嬉しさと戸惑いを混ぜこぜにした返事をしたのは実家の隣に住んでいた子供…いや、もう子どもというサイズでも年齢でもない。
身長百七十七の真よりどう見ても大きい。
「え?どして?鍵は?」
「ミチコさんから借りてきた」
ミチコは真の母親で、歳は五十台半ば。
ややぽっちゃり体型の母親は社交的でいつもニコニコしている人だ。
きっと近所にお使いを頼むような軽いノリで翼に鍵を渡したのだろう。
「…あのさ、マコちゃんてさ…その…ううん、何でもない」
「何だよ、言ってみろよ」
言い淀みながら視線を下げ、でも上目遣いで真を見る何か言いたげな視線。
「…え…と、間違ってたらゴメン。…あの、マコちゃんて、もしかして…抱かれたい人?」
「…ッ!」
ヒュッと喉に嫌な空気が入り込んだような気がした。
サーッと顔面から血の気が引く音が多分した。
「な…な…いや、えーっと…そんな事… …な、何で?」
翼は人差し指をシーツの上になぞらせた。
その指はのの字を描いている。
「…ホントごめんなさい…あのね…マコちゃんが言ってたからさ…あの…お手伝いしちゃったんだけど…」
翼は愁傷な顔つきで話し始めたが…一方の真は頭はひんけつ状態で体は薄ら寒く心臓は早鐘をガンガンと打ちまくっていた。
「…!はわわ…俺、なんて言ってた?」
「えと…ご開帳状態でローションって言ってたからローションをマコちゃんのお尻のあn…」
「ちょっちょっと待って!一回落ち着こ?ね、ね。深呼吸…あ!あぁン!」
落ち着けと翼に言ってる真が慌てて勢いよく起き上がった途端、胎内にインされたアレが俺の存在を忘れるなよとばかりにその快感を主張した。
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