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第4話

「んんッ!」 甘い声を零し真は中途半端に身体を起こしかけた状態で動きを止めた。 不自然に上半身を捩った態勢でベッドに手をつ付く真。 馴染みのない快感に翻弄され…でもイけず…軽く絶望を意識した。 「…な…んだよもう…」 体を動かした事でお尻にインされたアレが粘膜を強く刺激したのだ。 気持ちよさと羞恥で真は半泣きだ。 『ヤバい…こんな恥ずかしい状況なのに…気持ちいい…』 潤んでしまった真の黒目がちな瞳を翼は見逃さなかった。 「…ねぇ…マコちゃん…泣いてる?嫌だった?それとも…気もちよかった…?」 幼馴染を上目遣いに見ている翼の目はやや色を含んでいる。 こんな翼、真は知らない。 「…イけない…けど…き…もちはい…のか…な…」 口に出すのが恥ずかしくて尻すぼみに小さくなる語尾。 「…ん?何?」 「な…何でもなぃ…」 真の言葉が聞き取れないせいなのか、ベッドに両手をつけ顔を近づけてくる翼は若干硬い声で真に問う。 「ところでさ、昨日何度もマコちゃんに電話したんだけど…電話に出なかったでしょ?」 「…電話?」 月曜から残業が続いていたし木曜日に発送通知を受け取ってからは楽しみにしていた荷物をコンビニで受け取るミッションに気持ちが向いていた。 「そういえば電話の着信なんて全く見てなかった」 「もう。だからミチコさんに鍵を借りて来たんじゃない」 「そうか…」 どうやら真が電話を取らないから直接家に来たらしい。 「それで翼はいつ来たの?」 「…えーっと…始発?」 「え?土曜の早朝にわざわざここに来る?それこそ電話でよくないか?」 しばらくぶりに会う幼なじみの行動を無下にする真の言葉。 「だってマコちゃん今日休みかどうか分からなかったし…仕事の邪魔はしたくないし…たまには会いたかったし…」 翼はやや口を尖らせて…それでも素直に答えた。 「そうか。心配してくれたのは有難いけど今日明日は仕事休みだよ」 「良かった。とにかくマコちゃんの仕事の邪魔はだけはしたくなかったんだもん」 「だもん」という可愛い語尾を使う翼は真より七つ年下で昔から可愛らしい顔立ちだが今はどう見ても身長は真より高い。 可愛いらしいよりカッコイイという言葉が似合う外見だ。 真が大学に進学してから実家にほとんど帰らずに過ごしている間、翼は男らしい恵まれた体つきに成長していた。 翼の髪の色は生まれつきやや茶色がかっていて軽くウエーブしておりやや目尻が垂れている。 翼の双子の片割れの空は見た目は翼と似ているが目尻がどちらかと言えば上がっていてシャープな印象だ。 顔立ちのせいか、もともとの性格のせいなのか…翼は優しくて社交的で誰彼構わず好意を寄せられやすい。 子供の頃から根っからの陽キャだ。 「翼幾つになったっけ?昔から可愛いとは思ってたけどちょっと見ない間にイケメンになりやがって」 「イケメン!」 翼の瞳がギラリと輝いた。 「マコちゃん俺の事イケメンだと思ってくれるの?俺のこの顔好き?あ、ちなみに四月になったら十九歳」 「若…。しかしなぁ、その顔どう見てもイケメンだろ。それから俺は翼の顔、好きだよ」 「ヤッター!嬉しい。ところでさ、マコちゃんは今気になる人とか付き合ってる人とか…いる?」 話が何だか違う方向に向いているような気がするが…まぁいい。 「いないけど…もしいた場合突然お宅訪問されたらマズイだろが」 「あ、そうか!だから一人アレで遊ぼうとしてたの?」 「えっ…」 …ギクッ… 翼の腕が真に向かって伸びてそっと腰を撫でた。 そしてそのまま真の腰を抱き寄せる。 「あッ…ああン…!」 自分より体格のいい翼から逃げられる訳ないのにその腕から逃れようと大きく身を捩った途端に真は再度アラレもない声をあげた。 「…!マ…マコちゃん!もしかして…すっごく感じやすいとか…?」 翼が鼻息を荒くして真につめよる。 『このオモチャ初めてだよね?相性いいのかな?』 イケメンの顔が間近に迫り真の心臓がこれでもかとドキドキ脈打つ。 「バカ!」 気持ちよさと年下の幼馴染にその姿を見られたのが恥ずかしく真は半泣きのまま翼を睨んだ。 「ひぃぃ…♡マコちゃん…!」 ガバッと真に覆いかぶさった翼は真の唇に自分のそれを押し付けた。 「あッ…」 なけなしの力で抵抗する真の唇が開いたその隙に翼は自分の舌を真の口中に押し込んだ。 逃げようにも両手は頭の上方で固定され、このままでは抵抗できない。 あれよあれよと翼の舌は真のそれを奥まで追いかけ逃げ場を無くしてからジュッと強く吸い付くとそれから彼の上顎や歯茎を舐めまわし唇にはこれでもかと甘噛みをした。 朝の室内に相応しくないジュルジュルと涎をを啜る音。 「んッ…ッ…苦し…」 捕らえられていた腕が解放され翼の胸をやっとのこと両手で押し返し、真は肩でゼェゼェと息をした。 息を止めていた分の呼吸を取り戻すかのように。 これはキスに驚いて呼吸が出来なくなるといういわゆる初心者あるあるだ。 「…もしかして…ファーストキス…?」 「ウッ…」 図星を突かれて真は逃げるように掛け布団を頭から被って翼の視界から隠れた。

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