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第5話

「ねぇ、マコちゃ〜ん。顔見せてよ。マコちゃんが可愛い過ぎてついキスしちゃったのはゴメンだから〜!ねえ〜」 腕ずくで布団の上掛けを取り去ってしまえば簡単な事なのに、翼は腕力に訴えず 真を説得していた。 「久しぶりに会えたんだからマコちゃんの可愛い顔もっと見たいな。会社はどう?意地悪とかされてない?それに俺の話も聞いてよ〜〜!」 布団の上から真の体を揺すったり、子供にしてやるようにポンポンと叩いてみたりと翼は真のご機嫌を伺っている。 だが真はさっきの翼の行動からして彼に不安を感じていた。 会社でイジメのようなものはもちろん何も無い。 だが二十五の男に可愛いとは?? それに痴態を晒した上にファーストキスまで奪われて...恥ずかしすぎて翼に見せる顔なんかあるはず無い。 そして追い打ちをかけるように...というか、幸か不幸か…翼が布団の上から真の体を揺するものだから気持ちがよくて…まだ感じちゃっている酷い顔を年下の幼なじみに見せる勇気はもちろん無かったのだ。 「…マコちゃん怒ってる?」 「…怒ってない…。けどこんな男、可愛くも何ともないだろ!うわぁ!」 布団の中からモゴモゴと答えると、突然体の自由を失った。 「マコちゃん、本当にゴメンね」 真は掛け布団ごと翼に抱きしめられた。 結果体に力が入り内側からさらなる刺激がもたらされる。 「や…やめ…、ぁンン!」 「…可愛い声…」 布団の隙間から真の顔を至近距離でガン見する翼は顔を上気させハァハァと息をしていた。 これは…多分ヤバイ…。 「…つ…ばさ…大丈夫か?」 恐る恐る問いかけてみるが…こんな翼を真は見た事がない。 『…興奮してる…?』 何に対して翼がそうなったのかは分からない。 だがとりあえず今はこの状態から自由になることが先だ。 「あ…ぁ…、はな…せ、苦しい」 動けば動くほど気持ちよくなりそうで腕に力を入れられない状態で翼から逃れようとしてはみるが、お尻に挿入されたモノが気になって思うように動けない。 そうこうしているうちに慣れない快感は度が過ぎるとひどく苦しいものに変わっていくのだと真は知った。 「あン!…苦しい…翼…!」 堪らず涙声をだすと翼はハッとした顔をしてようやく布団ごと抱きしめていた真を離し、もといた場所…ベッド脇に体を戻した。 「マコちゃんゴメン…つい…」 翼がシュンとした顔で改めてベッドの側で正座し直すと真はゆっくりとした動作でベッドの上で翼と同じく正座をした。 直に座りたかったのだが…今お尻をベッドに置く勇気は無い。 「落ち着いたか?それで今日は何の用で来たんだ?」 「マコちゃんに会いたくて…」 くぅ〜ん…という声が聞こえそうな叱られた大型犬のようだ。 「…それだけ?」 「それだけって…あれ?ミチコさんから聞いてない?」 母は何か言ってただろうか? 腕を組み目を閉じてしばらく考えてみるが…今週は特に忙しくて…ん?そう言えば月曜日、慌ただしく昼飯を食べていた時に母からの電話を取った気がする…。 「…何か言われたな…何だっけ…思い出せない」 あの日は…朝からずっと忙しくてコンビニおにぎりをギリギリ昼が終わる頃に齧っていたら母からの電話が鳴ったのだ。 そこまでは覚えてる…。 「え〜っと… …」 はぁ、と翼が一つため息を落としてから言った。 「春から俺がここに住むって話じゃないの?」 「…そうだっけ… … …あ!」 思い出して真は叫んだ。 「そうなのか!」 ミチコ(母)の言葉を思い出した。 『あなたのお家、静の部屋が空いてるわよね?』 その時は『あぁ』だか『うん』だか確か肯定する言葉を言った…ような…。 うん、多分間違いない。 だけど部屋が空いてるからといって誰かが同居するとまでは聞いてない。 部屋が空いている、という事実確認だけだ。 今真が住んでいるこのマンションは元々はやり手の姉が株で儲けた資金で購入し、ちょうど同じタイミングで真が就職したのをきっかけに姉弟で暮らし始めたのだ。 しかし今年の正月に姉は恋人と同棲するからとこのマンションを出ていき…真は相場より格安で姉に家賃を払い一人暮らしをすることになった。 つまり、姉のいた部屋は空いている。 『姉ちゃんの部屋が空いてるって…そういう意味で聞いたのか…』 真は母が言いたかった事を今頃理解した。

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