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 それでもあの男は俺の中ではヒーローだった。  あの河原でケンカしているのも何度も見かけたが、黒い集団の中でも一際輝いて見える金髪。  無駄のないしなやかな動きに目を奪われていた。  いつかあぁなりたい!  少しでも近付きたい!  遠すぎない距離で男を見つめて満足する日々。  でも、男はいつの間にか姿を消してしまった。  お礼さえ言うことはできなかった。  あの金髪を探したけど街ですれ違うこともなくなり、勇気を出して一緒に居るのを見かけたことがある男たちに声を掛けたけど…… 「あー、知らね。つか、ガキが気軽に話しかけてくんなっ!」  タバコの煙を顔面に吹き掛けられて、死ぬんじゃないかってくらい噎せた。  しゃべったのはあの日だけで、向こうは俺みたいな小学生なんて覚えていないかもしれない。  でも、勝手に構ってもらえた気になって、勝手に救われていたんだ。  父さんに強く当たられても笑われたあの笑顔を思い出せば何でもない気もした。  あの革のブレスレットを両手で握り締める。  ヒュッと拳を振るだけで男よりデカい男だって吹き飛ばされたように……いつか俺も父さんの縛り付けだって軽々と跳ね返せる気がした。

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