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獅子谷に言われた通り一時間目から真面目に行くなんて絶対にしたくなかったのに。
親父から『今から帰る』と連絡を受けた母親が嬉しそうに朝食を準備し始めたのを見て、俺はさっさと家を出た。
そもそもこんな朝になって帰って来るなんて……普通なら朝帰りだ何だと騒ぎそうなものなのに。
本当に親父は海外とのやり取りだったり、システムトラブルの対処をしていたり、仕事の理由以外なくて面白味もない。
まぁ、万が一浮気であったとしても、あの母親は気づかぬフリをして笑顔で出迎えるんだろうが。
学校までは電車で三駅。
駅に行って電車に乗ってしまえば一時間目どころか下手したら朝のホームルームにも間に合ってしまう気がする。
「チッ……」
舌打ちをして歩いていくと、不意に俺の前にいくつか靴が止まったのが見えて顔を上げた。
その顔を見ても見覚えはないが、話すより手が出るタイプなのはわかる。
「椎堂 、顔貸せよ」
「あ?」
顎でシャクられてその態度にイラッとして睨みつけた。
「借りを返してやる」
むしろ、初対面かと思うくらい記憶にはないがちょうどいい。
時間潰しになる、と笑えてしまった。
「あ?何笑ってんだ!こっちは八人だぞ!」
むしろ、八人でなら勝てると思って来たなんて……クソダセェ。
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