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30、第5話「マジか!!」
「ちょっ!こっち来いっ!!」
襟首を掴まれて凄い勢いで連行される。
そのまま連れて来られたのは階段を上った三階にあるパソコン室。
ブラインドの閉まったその薄暗い部屋に入ると、やっと手を離された。
「はぁ?」
襟元を直して睨むと、獅子谷はすぐそばのイスを引いてガタンと崩れるように座る。
そのまま机に両肘をついて頭を乗せ、しばらく動かなかった。
「意味わかんね」
ブラインドを少し開けて光を入れると、やっとピクッと獅子谷が反応する。
「で?“小さき百獣の……”」
「言うな!」
「は?」
「そんな黒歴史持ち出すな!」
やっと眉を寄せて堪えるような顔をした獅子谷。
その顔を見ただけでなぜかゾクゾクとした。
「へぇ……」
どうしたって口の端が上がるのを感じる。
「黒歴史?」
笑いながら近寄って獅子谷の座る椅子の背に手をついた。
そのまま腰を折って顔を近づけると、獅子谷はキュッと唇を噛む。
「さっきの反応……コレ、見覚えがあるんだろ?」
ブレスレットを見せてやると獅子谷はそれをじっと見つめた。
「……お前はそれをどこで手に入れた?」
「あんたがくれたんだろ?」
窺うような獅子谷に微笑む。
「……お前があのクソガキかよ」
「あぁ、あんたが“小さき百獣の王”だって認めたってことだけどな」
「っ……」
舌打ちした獅子谷に笑いかけると、獅子谷は顔を覆って深いため息を吐いた。
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