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「もう“小さき百獣の王(そんな呼び名)”覚えてる奴なんて居ないと思ってたのに……」  零された声があまりにもか細くて手を伸ばしそうになる。  この手で何をするつもりだ?自分に問いかけて慌てて手を引っ込めた。 「……黒歴史とか言うな。少なくとも俺はあんたに救われたから」  だが、俯いて動かない獅子谷がやけに小さく弱々しく見えて俺はその綺麗な形の後頭部に触れる。  サラサラで艶のある髪。  当時の輝く金色とは違うが手触りのいい髪だった。  何度か撫でていると、ゆっくり獅子谷が顔を上げる。 「救われた?やめとけ。俺は壊してめちゃくちゃにすることは何度もあったがそんなの……」 「俺が救われたって言ってんだろ!あの時のお礼を言いたくてずっと探してたんだ」  クシャリと前髪を掴むその手をそっと離させてそのまま両手を繋いだ。 「あんたが笑ってくれたから、あんたがコレをくれたから……俺は今まで生きてきたんだよ」 「大袈裟だな」  額がつくほどの距離で訴えても獅子谷とは目が合わない。 「マジだかんな?あんたは俺の憧れなんだよ!」 「……それでそのナリか?」 「おう!」  金色にしたのも、長髪でいるのも、ピアスもネックレスも学ランを開けているのだって……。 「単純だな」  無理矢理目を合わせてやると、やっと獅子谷はフッと笑みを溢した。

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