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 これまであんなにムカついたのにじっと前を歩く獅子谷を目で追ってしまってどうしようもない。 「じゃ、ちゃんと授業受けてろよ」  教室のドアの前でバチンと背中を叩かれて、俺はそのじんわりと痛みの広がる背中を撫でる。  亮雅と祐生に手を振られて席に着いた俺は机に突っ伏してため息を吐いた。 「何?そんな搾られたのか?」  亮雅に声を掛けられても動きたくなくて返事は返さない。 「授業始めるぞ」  次の授業の教師も入ってきたようだが俺は動かず伏せたままで居た。  それでももう何も言われない。  むしろ、俺に何かを言ってくるのなんて獅子谷くらいだった。  目を閉じるだけで浮かぶあのキラキラ光る金髪。  ずっと憧れて探し続けた人物が今……。  声が聞こえた気がして体を起こす。  教師と目が合って、慌てて逸らすのを見て舌打ちしかけた。  止まったのはやはり獅子谷の声が聞こえてきたから。  何を言っているかまではっきりとは聞こえないが、隣のクラスで授業をしているらしい。 「ん?どーした?」 「いや……」  むしろ、黙って欲しくて亮雅も軽く払って耳をすませる。  窓の外はどこかのクラスが体育をやっていて、その声さえ邪魔だと思ってしまった。  獅子谷が体育教師なら他の授業中でも姿を見ることができたのに……恋する乙女のような思考だと気付いて頭を振る。  違う。違う!  あのカッコよくて惹きつけられた昔の姿に憧れているだけだ。

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