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「椎堂、お前、今日も残れよ」  帰りのホームルームの時に耳打ちされてガタンとイスを鳴らしてしまう。  なのに獅子谷は知らん顔で俺の横を通り過ぎて行った。  涼しいその顔は昔のギラギラした感じは一切ない。  驚いたクラスの奴らがこっちを見ていることに気づいて、俺は舌打ちをしつつ机の脚を蹴った。  その机が前の席である祐生のイスに当たる。 「ちょっ、怖いって」  振り返った祐生の呟きを聞いて睨むと、祐生はビクッとして小さくなった。 「何イラついてんだよ。溜まってんじゃねぇの?」 「あ?」  それを見ていたらしい亮雅が俺の肩に腕を回してくる。 「昨日は結局そのまま帰ったんだろ?」 「そーなん!?リホちゃんもチカちゃんの胸もめっちゃふっかふかだったぞ!」  結局、昨日は亮雅と祐生が行ったらしいのをぼんやりと聞いていた。  これまでなら女の話を聞けば少しくらいヤる気になったのに不思議とそんな気にもならない。  ハリのあるそんな胸より……頭に浮かんだのはあの小さな突起。  ーーーいや、男だろーがっ!!  ガンッと机に頭をぶつけて動きを止めた。  辛うじて反応はしていない。  でも、このままではマズい気もする。 「亮雅、適当に見繕え」  突っ伏したまま呟くと、くすくす笑う亮雅の声。 「ん、マリンに……な?」  それを聞いて動かないまま目を閉じる。  獅子谷を抱いた感覚が残ってるのがよくないんだ。  女を抱けば……きっと……。  伏せていた俺は獅子谷の視線には気づかなかった。

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