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翌日、とにかく眠れなくて起き上がれず、学校に向かうかさえ迷ったほど。
「で?今日はもう四時間目だが?」
下駄箱で待ち構えていた獅子谷をチラッと見つつ、とりあえず靴を履き替える。
「おい」
通り過ぎようとすると、腕を掴まれて仕方なく足を止めた。
獅子谷があの伝説の男だと思うと下手に反発もできなくて困る。
どうしたってあの憧れたカッコいい姿が過 ぎってしまって、たまに見せる当時と同じ目、同じ声を聞くだけでドキドキするから。
「昨日、残ってろって言ったのも無視して帰りやがって」
「あー、忘れてた」
何でもないように答えて軽く笑っておく。
一緒に居て動悸が治まらないから昨日は女とヤって忘れようと思ったのに……むしろ、女では勃たなくて余計頭から離れなくなったなんて笑えない。
「なら忘れねぇように……」
右手を引っ張られて何事かと思ううちに右手の甲に油性ペンが近づいていて焦った。
「なっ!おまっ、バッカじゃねぇのっ!?」
そんなもんで書かれるなんてあり得ない。
なのに慌てて手を引いたせいで謎の線は書かれてしまっていた。
「てめ……これどうしてくれんだよ?」
「あ?お前が大人しくしてたらちゃんと書けたんだよ」
「フザけんなよ?」
見ていたらそのヘロヘロの線も悪くない気さえするから困る。
「とにかく!今日こそ残れ!帰りやがったら明日はしっかり書いてやるからな!」
フッと笑うその顔なんて昔のままで、俺は嬉しさのあまり泣きそうになるのを何とか堪らえた。
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