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 で、大人しく残るなんて……と思いつつちゃんと教室で席に座ったままの俺。 「え?圭斗、どっか調子悪ぃの?」  ビビりつつ祐生に聞かれても、 「……かもな」  ゆったりイスに座ってみんなが帰りの準備をしていて静かなグラウンドを眺めてしまった。 「いや、逆にビビってるからやめてやれ」  亮雅がイスごと寄って来てタバコを差し出されても、それを取る気にもなれない。 「えー……」  驚きを隠せない様子の祐生を見ても今はイスを蹴る気にもならなかった。 「昨日もヤんなかったし……どっか悪ぃの?」  亮雅に小声で言われて拳を撃ち込んでやる。  バチンと音がして、受け止めた亮雅は思いっきり眉をひそめた。 「いってぇよっ!元気じゃねぇか!」 「どこも悪ぃなんて言ってねぇよ」  俺の手を振り払ってプラプラと手を振る亮雅に笑ってやる。 「こっわ!あの勢いで殴る圭斗もそれを受け止める亮雅も信じらんね!」 「お前はチャラいだけでケンカはできねぇもんな?」  クツクツと笑う姿を見ていてもため息しか出なかった。 「何?女に飽きたか?」  睨んでやると、亮雅は俺の耳に口を寄せてくる。 「男にハマったとか?」  ニッと笑ってその目は獅子谷を見た。 「黙れ」 「はいはい」  素直に離れた亮雅。  だが、その目がまだ笑っていてイラッとする。  確かに獅子谷があのデリヘルで働いているという証拠はなかったが、亮雅がしゃべれば面倒なことにはなるんじゃないか?  そもそも、なぜあいつはデリヘルでなんて働いているんだ?

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