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39、第6話「やっぱり」

 何とかプリントを埋めて解放されたはいいが、校舎から出た俺はやけに湿度の高いじっとりとした空気にイラつく。  結局、デリヘルについては獅子谷は何も答えなかった。  なぜ急に姿を消したのか聞いてもそれについては「別に消えた訳じゃない」の一点張り。  この約十年で何が獅子谷をこんなにも変えてしまったのか。  今の獅子谷は想像もしなかったほど、当時の輝きも鋭さもない。  あの頃が高校生だったのだから単純に今の獅子谷は二十六からハ歳くらいだろうが。 「……わかる訳ねぇだろ」  ガンッと校門を蹴って俺は学校を後にした。  ほぼ空のカバンを左脇に抱えてスラックスのポケットに両手を突っ込んで歩く。  前から歩いてくる奴は俺を避けて道は自然と空いていった。  みんなが見た目だけで恐れているのはわかる。  普段、赤髪の亮雅と歩くと金と赤の組み合わせは目立つらしく、人が避けていくのはかなりあからさまだ。  別にそれを気にはしていないし、実際人が避けてくれるのは楽でいい。だが、 「あっ!圭斗じゃーんっ!一人なのって珍しくない?」  目立つが故に声を掛けられることもある。  胸元に青いチェックのリボン、同じ色の短いスカート。  胸元まである明るい茶色の髪を揺らして走ってきた女は俺の腕にくっついてきてにこにこと笑った。  誰も腕を組めとは言っていないのに。  しかも、この女は俺のこと知っているようだが俺は一切記憶にない。

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