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 急所は外して多少は食らいつつ、確実に倒していく。  落ちている鉄パイプを拾うと、亮雅も金属バットを振り回していた。 「おいおい、血ぃ出てんぞ?」  ニヤニヤ笑って見ている佐尾にイラッとはするが、まずは少しでも数を減らさないといけない。だが、 「圭斗!お前、行け!」  亮雅が勢いよくバットを振り回して、周りの奴らも避けた隙に佐尾へと近づく。  でも、人数が多過ぎて、佐尾にはなかなか届かなかった。しかも、 「クソっ」  背後から肩にバットを振り下ろされて、持っていた鉄パイプを落としてしまう。  咄嗟に足を振り上げてそいつは蹴り倒したが、丸腰の俺は四方から飛んでくる攻撃をほとんど食らうことになってしまった。  頭も殴られてさすがにクラクラする。  血と埃と男たちの汗の臭いで感覚も鈍っている気がした。 「圭斗っ!!」  亮雅の声も遠い。だが、 「おいおい……マジかよ」  ガコンと大きな音がして開いた扉。  ピタッと喧騒が止んで聞こえた声に耳を疑った。 「警察に世話になりてぇバカは残ってろ」  ビリビリとするような低く響くこの声は間違いない。  ネクタイを抜いて首元のボタンを外して緩めた獅子谷は向かって行った男を難なく蹴り倒してそのバットを手にした。 「まだわかんねぇか?」  ずっと見たかったあの目。  ガンガンなぎ倒していくその姿は当時のままだった。

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