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「おはー……え?」
亮雅と共に俺が歩いてきたことがそんなに珍しいのか、パクパクと口を開け閉めしたまま時計を何度も見て言葉を失う祐生。
ムカついて俺の机を蹴ってイスにぶつけてやると「だってぇ!!」と祐生は口を尖らせた。
「てか、何?またケンカでもしたのか?」
俺は頭に包帯。
亮雅は右頬に大きなガーゼで足は引き摺っている。
そりゃすぐにわかるだろう。
「女とイチャついてた下半身男には関係ねぇ」
「えー、それ圭斗が言う?」
確かに今までは俺がそうかもしれないが、そこは無視して睨むと祐生は黙って前を向いた。
それとほぼ同時に開いた教室の前扉。
入ってきた獅子谷はこっちを見はしたが表情も変えず教卓の前に立った。
「きりーつ!」
号令があってガタガタと立ち上がるクラスの奴ら。
亮雅を見ると立ち上がりにくそうにしながらもイスを引いていて、それはさすがに立って助けてやる。
「あ、悪い」
掴まる亮雅に軽く頷いておいて前を向いた。
「れーい!」
綺麗な角度でお辞儀をする獅子谷をただ見つめてしまう。
ガタガタとまた音がして亮雅も座ったことに気付いて、俺はペタペタと靴を鳴らして席に戻った。
何となくむず痒い気がしてそれからは獅子谷を見られず、ただ意味もなく校庭を見つめる。
でも、獅子谷の声は心地よい高さで耳に入ってきて、俺は引いたイスに浅く腰掛けると腕を組んで目を閉じた。
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