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「で?こんな時間に来るのか?」
十九時過ぎに現れた俺を見て、白衣を着たままの渋谷は腕を組んで呆れた顔をする。
「来いっつったのはお前だろーが!」
「いや、診察時間内に来いよ」
言いつつもドアを開けてくれるのはやはりこいつがいい奴だからだろうか?
「金出しゃいいのか?……ん」
財布を差し出すと、渋谷は額に手を付いてため息を吐いた。
「そういうことを言ってるんじゃないだろ?全く……椎堂くんも金で考えるのか?」
「あ?」
眉を寄せると、振り返った渋谷は俺の手を財布ごと押す。
「いいから財布しまって……話がしたいんだろう?」
微笑んで渋谷は待合室にあるソファーに腰掛けた。
俺もそこに座ると渋谷はグッと伸びをする。
「で?何が聞きたい?」
チラッと見られて少し考えた。
聞きたいことなんてあり過ぎる。
獅子谷はわからないことだらけだから。
「……お前らっていつも一緒に居たのか?」
「ん?俺ら?俺と怜旺と実がってことか?」
頷くと、渋谷は顎に手を当てた。
少し考えるような素振りをしてからこっちを見てくる。
「俺が小学生の間はほぼ毎日一緒だったよ。すぐそこに団地あるの知ってるか?」
頷くと、渋谷は足を伸ばしてその先に視線をやった。
「怜旺と実はそこに住んでいて、俺は実の親父さんがここに入院してた関係で仲良くなって怜旺たちと一緒に居たんだ」
学年も違う渋谷が一緒に居た理由。
先に続くことは何となく想像できた。
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