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俺の家の前を通り過ぎる時に一度足を止めた亮雅。
「ここでいい」
「いや、お前ん家まで行くぞ」
腕を掴んだまま足を踏み出すと、亮雅はため息を吐いた。
「何で嫌がってんだよ」
「むしろ、何で急にそんなん気にし出したんだよ」
ムッとしている亮雅を思わずじっと見てしまう。
「な、何だよ」
「知られたくねぇの?」
「……」
また顔を背けた亮雅は何も言わず歩いて、しばらくしてから足を止めた。
「だからぁ」
「……ここだよ」
「あ?」
俺の家から五分も経っていない。
だが、確かに表札にも“八神”と書いてある。
「あれ?……同小、だっけ?」
記憶を辿っても思い当たる人物が居ないし、亮雅は転校生でもなかったはずだ。
「……ちょっと来い」
亮雅はため息を吐いて門を開けると、そのまま玄関の鍵も開ける。
家に入って器用に手すりを使いながら片足で階段を上がっていく亮雅を俺は黙って追いかけた。
「ん」
亮雅が出したのは確かに俺も持っている小学校の卒業アルバム。
ペラペラ捲っても亮雅なんて見つけられず首を傾げる。
「お前、何組?」
「……二組。でも、載ってねぇよ」
「はぁ?」
最後の名前の一覧には確かに二組に名前があった。
だが、俺も同じクラスなのに記憶にはない。
「……どーいうことだよ?」
聞くと亮雅はベッドに座って長々と息を吐いた。
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