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「えーっと……佐田、だっけ?」
「佐尾だっ!!フザけんなっ!!」
歯を剥き出しにして怒る佐尾を見て、面倒だとしか思えない。
よくもまぁこう何度もやられに来れるな、と……呆れを通り越してバカ過ぎることに感心すらする。
しかも、今回はたったの三人。
今までで人数も一番少ないとか……暑さで頭も沸いたんだろうか?
それとも、獅子谷にやられてそんな思考力もなくなる程のダメージを負ったのか?
「いいわ……とりあえずコレ渡しとくな?」
言いながら脇腹に当てられたのは小型のナイフ。
しかも、佐尾と同時に三人も当ててきて俺の腹も背も四方向から刃を添えられていた。
「へぇ……」
下手に反応はせず様子を窺うと、佐尾はおもしろくなかったのか舌打ちをして俺の学ランのポケットに封筒を捩じ込む。
「は?男からのラブレターとか……」
「だ、誰がラブレターだっ!!よく見ろっ!!」
唾を飛ばしながら喚いた佐尾を睨みつつ封筒を取り出して開いた。
中から出てきたのは亮雅の写真と祐生の写真。
しかも、祐生は女と笑っている写真だった。
「そいつらにグサッとされたくないよなぁ?」
ニヤリと笑う佐尾に頭突きでもしてやりたい。
だが、そんなことをすれば他の三人が刺すだろう。
それにこの言い方……亮雅たちの周りにも居るのかもしれない。
「着いてってやればいいんだろ?」
「あぁ」
満足そうに佐尾はナイフをしまって歩き出す。
だが、俺の両側と後ろに居る男はまだナイフを当てたまま。
着いたのは駅から少しいった空きビルだった。
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