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 右目にモロに入った拳。  クラッとするのを意地でも堪える。 「ヤベ……無抵抗の椎堂とか……クるな!」  卑しい笑い方をする佐尾をぶん殴れないのがもどかしい。 「は?趣味悪ぃな」  本音が漏れて顎を殴られた。  こんなの……堪えるのは限界かもしれない。  せめて亮雅が祐生と居れば……。  ギリッと奥歯を噛み締める。 「おら!椎堂!何だ、その目はっ!散々ナメたマネしやがって!謝れや!」  腹に佐尾の蹴りが入って、スキンヘッドが左足に容赦なく机から抜いた引き出しを振り落としてきた。  ガコンと音が鳴って、さすがに蹲る。  声を出さずに耐えたことを褒めてもらいたい。 「おいおい、謝る前に動けなくすんなよ?」  言いながらも嬉しそうな佐尾。  左足がズキズキと痛んでこれ以上やられるとさすがに動けなくなるかもしれない。 「おい、引き上げろ」  佐尾が指示すると左右からスキンヘッドとずっとただナイフを持ったまま様子を見ていた男が俺の脇を抱えて上半身を起こす。 「さてと……そろそろ泣けや。ちゃんと撮ってやるからな?で、みっともなく謝れ!それを拡散して二度とナメた態度取れねぇようにしてやるよっ!」  ナイフを取り出してパチンと刃を出すと俺の顎を指で持ち上げた。 「そんなのお前らも映ってるし、殴ってるとことかむしろお前らがヤベェだろ?」 「編集って知らねぇの?うまくお前が泣いて謝るとこだけにするから安心しろ」  余裕の笑みを見せる佐尾を見ながらあとは何かないかと考える。  両脇に当たっているナイフと目の前にも突き付けられている佐尾のナイフ。  ……絶対絶命なのかもしれない。

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