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70、第9話「★ひととき」
そんな顔をされてドキドキしないわけがない。
フロントに電話をして俺が言ったつまみの盛り合わせを頼むと、獅子谷はそのままスマホを耳に当てた。
「あ、順?地図送るからそこのビルにある壊れた黒いパソコン回収しといて」
どうやら電話の相手は渋谷らしい。
何やら文句を言われているようだが、獅子谷は笑って「ん、よろしくなっ!」と電話を切ってしまう。
「いいのかよ?」
「何だかんだ文句言いつつ事務所に届けてくれんだよ。あいつは」
伸びをして獅子谷はベルトを外して、またシャツのボタンを一つ外した。
すると、露わになる形のいい鎖骨。
青いライトを受けて艶めかしく浮かび上がるようで俺は慌てて目を逸らした。
「事務所って?前、ドア壊したあそこか?」
そのまま聞いてみたのに、やはり話す気はないのか獅子谷は答えない。
「あそこがもう一人の幼なじみ……えっと、実?だっけ?そいつ……」
「実のことまでしゃべったのか、あのクソ医者はっ!!」
パキッと指を鳴らした獅子谷。
その表情はさっきの微笑んだ姿とは別人のようだ。
ピリッと空気が張り詰めて転がったままの俺も下手に動けない。
しかし、すぐにノックの音がした。
頼んだ盛り合わせが届いたらしい。
ドアを見てから息を吐き出した獅子谷はそのまま行って受け取る。
ドアが閉まって再びカシャンとロックが閉まると、獅子谷はポテトやソーセージの乗ったカゴを持ってきた。
「ほら。てか、そんなんで腹膨れんのか?」
別に腹が減っていたわけではない、と言ったら怒るだろうか?
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