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必死過ぎて歯まで当たってダサ過ぎる。
「ちょっ……ふ……ん……はっ……」
何かを言いかける獅子谷の言葉ごと飲み込むように、とにかくただ逃さずキスを続けた。
どれだけの時間、そんな下手なキスをしたかはわからない。
お互いに息を乱しながら離れると、垂れた唾液でベタベタの獅子谷は俺が握ったままの両手を振って離そうとする。
右手が外れると、獅子谷は手の甲で拭って下からこっちを見てきた。
そのまだ乱れた息遣いも、まだ全裸の身体も……何もかも俺のものであって欲しいと思ってしまう。
「……好きだよ」
もう一度言うと、必死な俺を見て獅子谷はフッと表情を崩した。
「“たぶん”だろ?小学生かよ」
右手で前髪を掻き上げてゆっくりとベッドに腰を降ろす。
「違う!……ずっとあんたに憧れてて……そりゃちょっと前はまたあんたに会いたかっただけだけど!今はあんたを俺だけのものにしたいんだよ」
俺もシャワーを浴びてパンツのみの……髪だって濡れたままでめちゃくちゃだが、そんなのはどうでもよかった。
ムードも何もない。
こんなフザけた貝殻のベッドの中で、ただ必死でクソダサい俺。
「そんなんオモチャを独占するガキと変わんねぇよ。“好き”じゃねぇ“欲しい”だけだ」
頭を振って否定しても獅子谷は笑っている。
「ケンカするか女抱くか……お前相当乱れてたんだろ?ちょっと男を抱いてみてハマっただけだ」
「違う!」
こんな気持ちは初めてで、俺はそれをどう伝えたらいいのかわからなかった。
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