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授業も終わってみんな帰った教室に残っていると、獅子谷が入ってきてため息を吐く。
「何で残ってるんだ?」
「あんたが来ると思って?」
笑うと、獅子谷は片眉を上げた。
「帰れよ」
「帰ったらあんたは居ねぇじゃん」
本心なのに獅子谷からは訝しむような目を向けられる。
「ったく……まだ目元は青いか?」
「あー、ちょっと腫れてるからな?」
あの佐尾たちに殴られた日が金曜日。
翌朝、獅子谷がまだ六時にもなっていない時間に渋谷を呼んで、車で来た渋谷にはかなり文句を言われた。
そして、そのまま渋谷の病院に着いたのに、獅子谷は車から降りると中に入ることもなく歩いて帰って行った。
俺は捕らえられて治療されて……まぁ、お陰で回復は早い気はする。
「目はちゃんと見えるか?」
とりあえず気にしてくれる獅子谷からはあえて視線を外した。
「見えねぇ」
「は!?」
驚いて近くに来て覗き込んでくるその顎を捉えてキスをする。
「はぁっ!?ちょっ……んっ……ふ……離、せ……」
「離さねぇ」
腰も抱き寄せてしっかり舌を絡めて混ざった唾液を吸った。
「お、前……」
ダンッと足を思いっきり踏まれてさすがに力が緩むと、スルリと逃げ出される。
「お前は何を考えてんだっ!」
「あんたも俺のこと好きになんないかなぁ?って」
「は?」
怒鳴られて微笑むと、獅子谷はポカンと口を開けた。
「だから、好きなんだって!マジで!」
前も言ったのにどれだけ信じてなかったんだ?
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