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93、第12話「夏休み大作戦」
結局、遅刻したり朝から来たりを繰り返し……遅刻した方がいいことに気づいた俺はいつも通り気にせず起きた時間に合わせて登校していた。
朝一で行くと、獅子谷は毎朝確実に見られるが二人で話す時間はない。
でも、遅刻して行けば獅子谷が捕まえに来る。
むしろ、その方が好都合だった。
だが、夏休みになってしまえばそもそも学校に行く用事さえない。
俺は部活にも入っていないし、夏休みに入ってしまったら獅子谷に会えない。
それは一大事だった。
「椎堂は残れよ」
そう言われるのもなくなるなんて……どうしたらいいのか。
「嬉しそうだな?」
亮雅が机に肘をついたままのんびりと言ってくる。
「んぁ?むしろ、一大事だっつの!」
俺も机に肘をついて見返すと、亮雅はフッと笑った。
「タバコもケンカももうしねぇ。女と遊ぶつもりもねぇって……マジ何?」
「そーだよ!おっきいふわっふわの胸、大好きなんじゃねぇの?」
祐生まで入ってきて呆れる。
「別に好きじゃねぇよ」
「ユマちゃんは?」
「あ?あー……」
亮雅に聞かれてチラッと思い出したあの女。
連絡は来たが『もう会わねぇ』って言ったらあっさり引き下がったんだが、違ったのだろうか?
「フラれたってヘコんでたけど?」
「今はマジで女も要らねぇんだわ」
祐生に言われつつ、俺はこっちを睨んで教室を出て行く獅子谷を見つめる。
「はぁ!?何でっ!!圭斗はどんな女でも入れ喰いなのに!?」
「……マジかよ」
騒ぐ祐生の声で亮雅がポツリと呟いたのは聞こえなかった。
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