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「夏休みも補充とかねぇの?」  机に片肘をついて前の席に横向きで座る獅子谷を見つめる。 「あ?フザけんなっ!こっちは夏休み中だって、部活だの研修だの会議だのやることあんだよ!」 「うわぁ、面倒くせぇ」 「お前、大人ナメんなよ?」  睨まれて体を起こした。  そして、少し問題と向き合ってもう一度顔を上げる。 「あのさ、その将来のことでガチ相談でもあんだけど……」  ずっと考えないようにもしていたこと。  でも、ちゃんとしようと思うと向き合わないといけないことでもあった。 「進学か就職で迷ってる」 「は?進学だろ?」  なのに、獅子谷はサラリと答えてメガネを押し上げる。 「何で?」 「いや、親父さんと同じ会社に入るんだろ?それなら学歴は最低限必要だろ?」 「何で親父と一緒って……」  どうしてそこで親父が出てくるのかがわからなかった。 「担任になったばっかの時に親さんに連絡したらそう言われたが?」  クソ親父がそう望むなら反発してやりたい。  だが、それで道を外れようとするのは今までと何一つ変わらない。  だから、ここは……。 「あんたはどこの大学出てんの?」 「は?そんなんよりせっかく大学行けるなら自分のやりたいことで考えろ」  俺の甘い考えなんてすぐに正される。 「……じゃあ、パソコン部に入る?」 「来んなっ!」  取り付く島もないほどの瞬殺。 「何でだよ!」 「目標も何もない冷やかしは……」 「あんたに会いたいからだろーが!」 「あん?」 「立派な理由だろ!?」  呆れた顔で深いため息を吐かれた。

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