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「獅子谷」  その髪に口付けると、獅子谷はゆっくり顔を上げた。 「その事故だってあんたが轢いたんじゃないだろ?」 「でも、俺がそこに出入りしてなかったら実も母さんも止めには来なかった」  口を固く結ぶ獅子谷はヒドく辛そうに見える。  確かにそうだが、どうしようか。 「うん。……でも、それを少なくとも滝本は責めてないだろ?むしろ、あんたの幸せを祈ってるっぽかったけど?」  額、鼻、頬、顎にキスを落として最後はそっと唇を合わせた。  チュッとリップ音を立てて離れると、俺はその頬にゆっくり触れる。 「……あんたが自分を許せないだけだろ?」 「うるさい」  ビクッとして逃げようとする獅子谷をしっかりと抱き締めた。  思いっきり力を込められてもそこは離してやれない。 「償うな!とは言わない!でも、背負い過ぎなんだよ!デリヘルしてまで……そこまで身を貶して苦しむことは誰も望んでないだろ!」 「黙れ!」  聞きたくないのか獅子谷が暴れた。  腕を振り回そうとして、足で蹴ってきて……拳を作っている手を何とか止める。 「黙らない!やるなら堂々と滝本に言ってからやれよ!隠すくらい後ろめたいなら……それはもう辞めろ!」  ギュッと腕ごと抱き締めると、殴って来ようとした手が止まった。  俺の腕の中で泣きそうな顔を上げる獅子谷。 「一緒に行こう?滝本を思うなら笑って会ってやれって」  潤んだ瞳は大きく揺れて、ギリギリで堪えているようだった。

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