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119、第15話「解放」

 獅子谷は最終的に滝本に会いに行くことを了承した。  かなり渋々ではあるが、それは大きな一歩になるはずだ。  だが、十年前とはいえ、獅子谷の中ではまだかなり重く暗い影を落としている事故だけになかなか行動には移せないようだった。  会いに行くだけだろ?……と突付いてみようかとは思った。  でも、獅子谷の中で整理をつけているなら、それは静かに待つことにした。  まぁ、デリヘルで客を取っていないのであれば……だが。 「圭斗ー?結局、夏休みの間ガチで勉強してたん?」  新学期が始まって数日。  クーラーの効いた教室で帰りのSTの最中に祐生がダレた声を出すのを聞いて頷く。  そのまま机の上のノートを見ると、祐生は「ゲッ」と顔を歪ませた。 「女の子ともガチで遊ばなかったなんて……大丈夫か?」  心配そうにされてむしろ笑う。 「ガチでどこにも行かずにエッチもなしだったのか?」 「さぁ?」  あまりにも真剣な顔をされて、ギッとイスを傾けて後ろ足でバランスを取ると亮雅と目が合った。 「一気に毒気抜かれやがって」 「愛に生きてっから」  舌打ちされて微笑んでおく。 「えっ!?マジっ!?圭斗、好きな女できたのか!?」  即反応した祐生に俺はイスを戻しつつ、足で机を蹴ってそのまま祐生のイスに当ててやった。  大袈裟に喚いて騒ぐ祐生のせいで睨んでくる獅子谷。  それでも笑ってヒラヒラと手を振ると、獅子谷はフィッとそっぽを向いた。

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