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まさかの明日。
そんな翌日だと言われるとは思わなかった。
「逃げんなよ」
煽っても睨むことさえなかったのは心配で、
「渋谷には?」
「……言ってねぇ」
聞いてみたら消え入るような声で答えて獅子谷は俯く。
「一緒についてきてもらった方がよくね?」
その顔を下から覗こうとすると、獅子谷は顔を背けてしまった。
「別にいいだろ?タクシー使えばいいし」
強がっているのが丸わかりで俺はそっとため息を漏らす。
「滝本とちゃんと話すのっていつ振り?」
「…………中……三?」
その間の長さは心配でしかない。
「言えんの?」
聞くと、獅子谷は黙り込んだ。
「俺もついてるからな?」
「……お前、どんな立場で行くんだよ」
膝の上で握り締めている手を取って笑うと、獅子谷は目を細めてこっちを向く。
「あんたのクラスの生徒、だろ?何?彼氏にしてくれんの?」
その手に口付けて上目遣いをすると、
「はぁっ!?」
凄い勢いで振り解かれた。
「チェッ……本気なのに」
「そこは冗談って言うところだろ」
呆れたような顔をされるが、本気なんだから仕方がない。
「冗談じゃねぇもん!」
もう一度そこは否定しても「はいはい」と獅子谷はあまり取り合ってはくれなかった。
「とにかく明日!ちゃんと話して来ような?」
またキュッと眉を寄せる獅子谷を見て立ち上がりつつ獅子谷の腕も引く。
抱き締める腕は振り解かれず、獅子谷もしばらく大人しく俺の腕の中に居た。
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