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 土曜日の午後。  うちの近くまでタクシーでやって来た獅子谷の顔は真っ青でぶっ倒れるんじゃないかと不安になった。 「大丈夫かよ?」  頷くその様子はどう見たって大丈夫じゃない。  ため息を吐いてとにかくその手を握ってやると、手はかなり冷たくなっていた。  こいつのほとんどを占めてきたような罪悪感を拭おうとしているのだ。  過去と向き合うのはやはりかなりの勇気が要ったのだろう。  少し震える獅子谷の手を両手で挟んで温めた。  すると、ジーパンのポケットに入れていたスマホが着信を告げる。  片手は握ったまま表示を見ると、そこには渋谷の名前。 「出ていい?」  一応聞いて応じると、 『ごめん。椎堂くんって怜旺の居場所知ってる?』  少し疲れているような渋谷の声がした。 「ん、今、隣に居るけど?」  獅子谷を見ながら返事をすると、ホッとしたように渋谷は息を吐く。 『あいつ、夜中に電話してきたくせに……朝から掛け直してんのに出ないんだよ』 「あー……今は?仕事終わりか?」 『あぁ。やっと終わった。で?怜旺は何だったって?』  じっと獅子谷を見ると獅子谷は縮こまって、俺はゆっくりその肩を抱き寄せた。 「今、滝本に会いに向かってんだよ」  強張る獅子谷を擦りながらその目的を告げる。 『は?』 「俺が渋谷にも連絡しとけって言ったし、一緒に付いて来て欲しかったんだろ?」  タクシーが到着する頃、渋谷は「なら俺も今から向かう」とだけ言って電話は切れた。

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