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 案内されたラウンジは広くてびっくりした。  まぁ、すぐ側で車イスのままテーブルにつく人を見て、車イス同士でもすれ違えるためのスペースだったのだと理解したが。  滝本は一人で歩いてきて、すんなり俺たちの前で腰を下ろす。  その動作がスムーズ過ぎて少し驚いたが、 「ここは僕たち視覚障がい者の席なんだ!」  壁にあるレールをなぞるのを見てその先もそれが続いていることに気付いた。 「椎堂くん!怜旺を連れて来てくれてありがとう!」 「いえ、むしろまた俺までついて来てすいません」 「ううん!また会えて嬉しいよ!」  手を差し出されて俺も手を伸ばして握手をする。  力強いその手の力を感じてから獅子谷に目を移すと、獅子谷はギュッと唇を噛んだ。 「怜旺も!久しぶり!」  すぐに滝本は獅子谷にも手を伸ばす。  だが、何かを堪えるようにその手を見つめる獅子谷。  手は差し出されたままで、俺は獅子谷をせっついたが獅子谷は眉を寄せて滝本の手を見つめていた。 「……待っててもいい?」  それなのに手を出したまま穏やかに微笑む滝本。  何度か促すと、やっと獅子谷はそろりと手を動かした。  震えているその手。  触れそうなギリギリで止まると、パッと滝本が動いてその手を掴んだ。 「っ!!」  驚いたような獅子谷の反応に滝本はケラケラと笑う。 「やった!やっと捕まえたーっ!!」  無邪気に笑う滝本を見て、獅子谷の顔がくしゃりと歪んだ。

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