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「ごめ……本と……ごめん」  震える声で謝りながら立ち上がってもう片方の手も滝本の手に添えた獅子谷。 「本っ当っ!寂しかったなーっ!……って、ウッソっ!!」  滝本はプクッと頬を膨らませてすぐにニコッと笑う。  目を潤ませた獅子谷の頬にも手を伸ばすと、そっとその頬をなぞった。 「会いたかったけど、俺は毎日楽しく過ごしてるし!順から怜旺が元気なのは聞いてたからね!でも、ちょっと肌が荒れ気味?寝不足じゃない?」  笑われて獅子谷が目を丸くする。 「ほとんど見えないけどね!でも、この手が感じてくれるよ!」  頬から手を離しても片方の手は繋いだまま、滝本は微笑んだ。 「……実」 「ねぇ!怜旺、話して!怜旺から聞くって順には言わないようにお願いしてたから!怜旺に聞きたかったことがいっぱいあるんだ!」  涙を堪えるような獅子谷に滝本はにこにこと笑う。 「ね?今日はゆっくり話せる?座ってさ!いい?」 「……あぁ」  手は離さず、獅子谷は滝本の横に移動してイスに座った。  そして、これまで会えなかった分を取り戻すかのように二人は話し続ける。  俺が設置してあった自販機に飲み物を買いに行っても二人の会話は途切れることもないほどに。その缶に口をつける時間さえ惜しむように。  お互いの今や仕事のこと、昔の思い出、同級生の近況……。 「おーおー楽しそうってか、凄い勢いでしゃべってんな」  渋谷が現れて笑われても、二人の話は尽きなかった。

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