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「こっちを見て?」
滝本が獅子谷の頬に触れて両手で包む。
なのに獅子谷はフルフルと首を横に振った。
「怜旺、僕は今幸せだよ?言っただろ?毎日楽しいんだって!」
滝本は手に力を込めて獅子谷の顔をガッチリ固定する。
「ここで好きな仕事をして、パソコンを教えてると“先生”って呼ばれたりしてさ!ちゃんと夢を叶えてるよ!」
微笑むと、獅子谷の目にまた涙が溜まり始めた。
それに気付いたのか、滝本は少し困ったように眉を寄せる。
「……ねぇ、怜旺!僕はずっと後悔してたんだよ。怜旺を一人ぼっちにしちゃったこと。あんなにも長い間離れちゃったこと……」
「何言って……」
「僕と変わらずサッカーしてたらあんなとこ行ってなかっただろ?」
滝本の言葉を獅子谷が割ると、すぐにまた滝本がカブせるように声のボリュームを上げた。
「待て」
首を横に振りながら獅子谷がその腕を掴んでも、
「怜旺があの連中とつるみ出した時にすぐ声掛けてたら……」
滝本の口は止まらない。
「違う!」
「じゃあ、こっちだって違うよ!」
獅子谷が両腕を掴んで止めると、滝本はしっかり獅子谷の方を向いた。
「は?」
「怜旺……あれは事故なんだよ。僕のせいじゃないなら、怜旺のせいでもない!」
キッパリ言い切ると、獅子谷の頬を涙が伝った。
同じように滝本の頬も涙で濡れる。
獅子谷がずっと苦しんできたように、滝本もまた辛かったのかもしれない。
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