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128、第16話「好きで、好きだ」
「……悪ぃ」
部活を抜け出してまた来てくれた、と思ったらイスに座るなり言われて首を傾げる。
「……デリヘルのこと実に言わなかった」
俯く獅子谷の頭をポンポンと軽く叩くと、獅子谷はそろりとこっちを向いた。
「あの金自体要らないって向こうから先に言われたし、それはあえて言わなくてよかったんじゃねぇの?」
形の良い後頭部から手を離せないまま微笑むと、獅子谷は少し目線を下げる。
「母さんも夜の仕事してたし……何となく気付いてるか」
「まぁ、あんたが突っ込まれてるとは思ってねぇだろうけどな?」
「あ?」
独り言のようなそれに返してそのまま頭を引き寄せると、鼻が触れ合う距離で獅子谷は睨んできた。
「ホストか何かだと思ってるだろ?あんなハメられて喘いじゃってんのは想像してねぇと思うぞ?」
パッとキスをしてニヤリと笑うと、思いっきり頭突きをされる。
「っ痛ぇっ!!」
叫ぶと、獅子谷はフンっと鼻を鳴らして体を起こした。
「キスの余韻に浸るとかもうちょい恥じらうとかねぇのかよ!」
口を突き出して拗ねてみると、
「フザけんなよ?」
鋭い眼光を向けられる。
「ヤーベぇ!カッケぇ!」
「本当ヤベぇな」
その目の鋭さに感動してしまうと、獅子谷は呆れたような顔を向けてきた。
「だってカッケぇじゃん!」
それでも俺は引かない。
すると、もういつものことになったからか、獅子谷はフッと笑った。
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