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「何でも何も……あいつしか居ないって思っちまったんだから仕方ねぇだろ?」  もうケンカをする気もない俺はただポケットに手を入れて亮雅を見下ろす。 「……あり得ねぇ」  しばらく睨んできたが、舌打ちをして亮雅はバッと手を離した。  亮雅が背を向けると目の前を赤い髪がひらりと舞う。 「お前もいつかわかるよ。このただ好きで、好きな気持ち……」  その背中に向かって言うと、 「んなもん、わかりたくねぇわ」  亮雅は振り向きもしないで大股で歩き出した。 「亮雅!」  追いかけて隣に並んでも亮雅はこっちを見ない。 「お前、どんだけ俺のこと好きなの?」  軽く言うと、再び胸倉を掴まれて顔を寄せられた。 「……っるせぇ」  ギリッと歯を鳴らすと、亮雅はまた手を離して背中を向ける。  その肩を掴むと、 「言うなっ!!」  亮雅は体の横で握った拳を少し震えさせた。 「いいのか?それで」 「俺がなりたかったのはお前の右腕だ」  聞いても目を合わせない亮雅はまたポケットに手を突っ込んで顔は上げない。 「お前はずっと俺の相棒だろ?」  そこ背中に声を掛けると、亮雅は動きを止めた。 「俺の背中を預けられるのはお前だけだったし、これからもくっだらねぇことでもお前は付き合ってくれるだろ?」  拳を突き出すと、亮雅はチラッとこっちを向く。  笑って首を傾げると、そこに勢いよくぶつけてきた。 「痛ってぇっ!!」  思いっきり骨がぶつかってお互いに手を擦る。 「ダッセ」 「亮雅がな?」  そのまま笑って学校に向かった。

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