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「んっ……ふ、は、ぁ……」  その声の甘さに欲が暴走しそうになる。  ズクンと疼きは感じるが、今はそれをぶつけたくなくて少し腰を引いた。 「っ……」  離れた俺と獅子谷の唇からは細い銀糸が繋がっていて、プツリと切れる。  トロンとした獅子谷がかわいくて、でも、お互いに何となくそれ以上求めるのは止めた。  獅子谷も少し身を捩って体勢を不自然に変える。  きっと俺も獅子谷も少し火はついたのだろう。  だが、今までの女なら即抱いてきたのに、そんな気にはならない不思議。  むしろ、獅子谷とだって数回身体を重ねたし、喘ぐ姿もその体温もリアルに蘇るが今は大事にしたい想いの方が強い。  保健室、体育倉庫、図書室、理科準備室、屋上へと繋がる階段……これまでに連れ込んだ経験のある場所は思い浮かぶのにそこには行きたくなかった。  何なら、獅子谷は自身が管理していていつも鍵を持っている部屋だってあるのに……そこは何かを穢してしまうような気がして嫌だった。 「マジで……かわい過ぎ」  フッと笑ってその耳に垂れた髪を掛けてやる。  その手に擦り寄ってきた獅子谷は俺の手に自らの手を重ねてゆっくり目を閉じた。  今更プラトニックだなんて変かもしれないが……獅子谷の初めての彼氏として、そこはちゃんと大事にしたかった。

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