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 耐えきれずに後頭部を思いっきり叩いてやると、祐生は軽く涙を浮かべて口を尖らせた。 「だってぇ!いっつもお前らサボんのに今日は圭斗居んじゃん!一緒に行事とか初めてでくっそ楽しいじゃんっ!!」  何だそれ……と思いつつ、前を向くと獅子谷と目が合ってすぐに逸らされる。  走って行って振り向かせたくなりつつも堪えてイスに座っていると、獅子谷がこっちに歩いてきた。しかも、 「祠堂、ちょっと」  呼ばれて、そんなのすぐに立ち上がる。 「えー!圭斗だけぇ?」 「なら、森川が走りますか?」  祐生がスネたように言うと、獅子谷はスッと目を細めてそっちを見た。すると、 「いや、俺はタルいんでいいっス!」  すぐに大人しく座る祐生。  ……というか、走る?どういうことだ? 「ってことで、次の次の次、二百メートル走れ」 「は?ヤダし」  そんなのさすがに頷けなくて断る。 「木村が熱出て休みなんだよ!」 「はー?休むなよ、木村ぁ」  文句を言うと、獅子谷は額に手を付いてため息を吐いた。 「今までずっとクラスに迷惑かけてきたんだからそのくらい貢献しろ」 「|制服《これ》で?」  両手を広げると、獅子谷は少し考える。  体操服なんてクソダセェものなんて持ってきていないし、こんな暑い中走るなんてしたくない。  行事に顔を出しているだけでも褒めて欲しいくらいなのに。 「……わかった。俺のジャージ貸してやる」 「いや、足の長さ足りんし!」  口にした瞬間ぶん殴られた。

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