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「くっそ……」  結局、頭に巻かれるのや蝶結びは何とか回避して、首に緩く結んだハチマキをぶら下げる。  獅子谷のなのは嬉しい。  でも、何でこんな派手なピンクなのか。  隣の赤や緑のハチマキを見てため息を吐いた。  赤、青、黄、緑、紫、ピンク……他の学年もその色分けだがやけに目立つピンクだけは納得いかない。 「次、二年男子スタート位置にお願いします」  声が掛かって他の連中が動き出す。  このままここで無視してやろうかと思ったが、 「祠堂!頑張れ!」  珍しく獅子谷が叫ぶ姿なんて見て立ち上がってしまった。  三コース。  こんな真面目に位置につくなんて小学生以来な気がする。  少し緊張している気がして、グッと拳を握ると太腿を軽く叩いた。  大丈夫だ。さっさと走ってやって戻ればいい。  クラスの目の前で騒がしい中、フーっと息を吐き出す。 「位置について……」  合図と共に膝を折ってラインに手をついてから目を閉じた。  さっきの獅子谷の声援が頭の中で何度もループする。  傍に獅子谷を感じる気がして心強い。 「よーい……」  わずかな静寂の中、スターターの音と共に目を開いて飛び出した。  大きく足を前に出して加速する。  ゴールテープを切った瞬間、思わずガッツポーズをした。 「っしゃーーっ!!圭斗ーっ!!」  騒いでいる祐生より、ただ立って笑っている獅子谷が目に入る。  獅子谷に向かって拳を突き上げると、獅子谷もそこで拳を高く上げた。
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