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「圭斗、めっちゃ速ぇじゃん!」
興奮気味の祐生を押し退ける。
こんな熱烈な歓迎より、獅子谷に褒めてもらいたい。
だが、獅子谷はこっちも見ないでクラスの連中と話している。
またあの委員風の奴も一緒でおもしろくなかった。
「獅子谷」
つい不機嫌な声を出すと、振り返った獅子谷はすぐにまたその男の方を向いて話す。
おもしろくなくて腕を引くと、少しよろけた獅子谷はすぐにこっちを睨んできた。
「何するんですか?」
だが、周りに人が居るからか口調はいつもより落ち着いている。
「走ってきただろ?一位!褒美は?」
「ん、だから、最後のリレーも出て下さいね」
「は?」
こっちも睨み落としながら言っているのに、獅子谷は平然とまた突拍子もないことを言ってきた。
「アンカーな」
「フザけんなっ!」
トントンと軽く肩を叩かれて怒鳴る。
周りの奴らがビクつくと、獅子谷は俺との距離を詰めて俺のTシャツを引っ張りながらこっちを見てきた。
「お前も八神もサボりで選手決めにも居ない。森川みたいな来ても走らない奴だらけ……そうなったら走る奴は限られるだろ?」
その目がまた鋭くなっている。
「だからって」
「今の二百で速いこと証明されたんだから……最後決めて来い」
「やると思ってんのか?」
顔をヒクつかせて聞くと、獅子谷はバインダーを見せてきた。
Tシャツを引っ張って屈んだ俺の肩に腕を回して引き寄せられる。
「今の得点……このリレーで一位だと学年優勝なんだよ」
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