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「んなもん……」 「優勝したら何でも言うこと聞いてやろうか?」  途中で遮られてニッと笑われた。  そんな勝敗に拘る熱いタイプには見えないのに、一体何なのか。  考えていると左の方からやけに大きな声援が聞こえてきて、獅子谷がそれに反応する。 「ったく……ぜってぇ黙らせる」 「は?」 「昨日から「うちのクラスは勉強も運動も一番なんで、かならず優勝します」なんてぬかしやがって」  舌打ちと共に発せられた言葉で何となく理解した。  獅子谷は意外と負けず嫌いらしい。 「わかったな!二Bにはぜってぇ負けんな」  やたら盛り上がっているそのクラスのハチマキは赤。  振られている旗にある『正義は勝つ』の文字とイラストはどう見たって戦隊モノの何とかレッドだ。 「ヒーロー気取りかよ」  鼻で笑うと、獅子谷も「だろ?」と頷く。 「それに……さっきのお前、めちゃくちゃいい顔してたよ!だから、最後も絶対勝ってこい!」  フッと微笑まれてドキッとした。  そんな顔をされたら……勝たなきゃいけない気もしてくる。 「勝ったら何でも言うこと聞いてくれるんだよな?」 「あぁ」 「本当に何でも?」  もう一度確認すると、獅子谷は少し躊躇いを見せた。  だが、キュッと口を引き結んで頷く。 「なら、デート」 「は?」 「獅子谷ん家で飯作らせて!」  驚いている獅子谷に微笑んで俺は他のリレーメンバーらしい三人と入場門へ向かった。
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