144 / 258
144
「んなもん……」
「優勝したら何でも言うこと聞いてやろうか?」
途中で遮られてニッと笑われた。
そんな勝敗に拘る熱いタイプには見えないのに、一体何なのか。
考えていると左の方からやけに大きな声援が聞こえてきて、獅子谷がそれに反応する。
「ったく……ぜってぇ黙らせる」
「は?」
「昨日から「うちのクラスは勉強も運動も一番なんで、かならず優勝します」なんてぬかしやがって」
舌打ちと共に発せられた言葉で何となく理解した。
獅子谷は意外と負けず嫌いらしい。
「わかったな!二Bにはぜってぇ負けんな」
やたら盛り上がっているそのクラスのハチマキは赤。
振られている旗にある『正義は勝つ』の文字とイラストはどう見たって戦隊モノの何とかレッドだ。
「ヒーロー気取りかよ」
鼻で笑うと、獅子谷も「だろ?」と頷く。
「それに……さっきのお前、めちゃくちゃいい顔してたよ!だから、最後も絶対勝ってこい!」
フッと微笑まれてドキッとした。
そんな顔をされたら……勝たなきゃいけない気もしてくる。
「勝ったら何でも言うこと聞いてくれるんだよな?」
「あぁ」
「本当に何でも?」
もう一度確認すると、獅子谷は少し躊躇いを見せた。
だが、キュッと口を引き結んで頷く。
「なら、デート」
「は?」
「獅子谷ん家で飯作らせて!」
驚いている獅子谷に微笑んで俺は他のリレーメンバーらしい三人と入場門へ向かった。
ともだちにシェアしよう!