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ガコンと凄い音がしてギギィと音を立てるドア。
昼間なのに薄暗い部屋は玄関と狭苦しい畳の部屋のみ。
パチンと電気を点けても小さなデスクとノートパソコン、扇風機、あとは畳んだ布団があるだけ。
「こんだけ?」
キッチンとも呼べない一角にカセットコンロと冷蔵庫はあったが中身もほぼなくて、小さめの雪平鍋とマグカップが一つあるのみ。
「だから、何もないって言っただろ!」
「ここまでないとは思わねぇだろ!」
言い返して冷蔵庫に最低限収めながらため息を吐いた。
塩さえないなんて誰が思う?
「マジでどんな生活してたんだよ」
言いながら押し入れを開けると、そこにはズラリと服が並んでいた。
「お前、遠慮ねぇな」
もう諦めたのかあぐらをかいてこっちを見上げる獅子谷。
上半分にはスーツと私服、靴やカバンもキッチリ並べられていて、下には本がビッシリだった。
それを見てやっと少しだけホッとする。
「何だよ」
振り返ると、獅子谷は膝に肘を付いて目を細めた。
「ここがあんたの生活拠点なんだな」
「は?」
「ちょっと感動」
「引いてたクセに」
そう言って腰を下ろして笑った俺に獅子谷は軽くパンチをしてくる。
「そりゃびっくりしたけど……嬉しい」
「よく言う」
その手を受け止めて引き寄せると、鼻で笑いながら獅子谷は大人しく俺の腕の中に収まった。
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