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「だから、冷蔵庫に入れたもん持って帰れよ?」  獅子谷の手が伸びてきて、俺の頬に触れる。 「チッ!刺し身とか買ってきて皿ねぇな?ってあんたに盛ってやればよかった」 「……」  俺も獅子谷の手に添えて言うと、獅子谷は黙り込んだ。 「引くなよっ!!」  慌ててツッコんでみても獅子谷はため息を吐く。 「趣味悪ぃ。あんなんこっちは冷たいし体温で刺し身は生温くなるだけなのに」 「は?やったことあんのかよ」  やけにリアルなその反応が気になって問い詰めると、獅子谷は目を逸らした。 「おい!」  ガシッと両頬を挟んで互いの鼻がつく距離にまで詰め寄る。 「答えろ!」  本気で求めると、獅子谷は小さく息を吐き出した。 「……昔だろ?デリヘルの客でそういうのが好きなのが居ただけだ」 「ムカつく」 「そんなんムカつかれても」  俺の手を外して獅子谷が体を起こす。 「……もうやってねぇ?」  すぐにあぐらをかいたその背中に聞くと、獅子谷は振り返って目を細めた。 「やってねぇっつってんだろ……っ!!」  そんな獅子谷に飛び掛かって押し倒す。  唇を塞いで舌を挿し込むと、深くとにかく絡めて唾液を混ぜた。 「んっ……ふっ……はっ……ぁ」  獅子谷の鼻から抜けるような声を聞きつつ一度少し離れる。 「俺だけ見てろ」 「は?見てんだろうが」 「俺だけだぞ!」 「お前こそ」  言いつつ手が伸びてきて後頭部を引き寄せられて、俺たちはまた長いキスをした。

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