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獅子谷はため息を吐いてカタンとイスから立ち上がった。
行ってしまう。くだらないことを言ったせいで貴重な獅子谷との時間が終わってしまう。
何とか引き留めたいがうまい言葉が見つけられず下唇を噛んだ。
「ったく……演技でもサービスでもねぇ顔知ってんのはお前だけだろ?」
そんな俺に降ってきた言葉。
パッと顔を上げると、獅子谷はクルッと体の向きを変えた。
その耳が赤くなっていて、俺はイスが倒れるのも構わず立ち上がってその手を掴む。
引いて俺の腕の中に囲うとそのまま口付けた。
短く何度も啄んで、開いた唇に舌を伸ばす。
すぐに獅子谷も舌を絡めてきて静かな教室にしばらく水音を響かせた。
「……ははっ、何て顔してんだよ」
前髪をぐしゃぐしゃにして笑われて、気恥ずかしさを誤魔化すようにその手を捕まえる。そして、
「本当に俺しか知らねぇの?」
「……んな恥ずかしいこと聞いてくんな」
聞いてみると、獅子谷は顔を背けた。
「ヤダ。言えよ」
そのせいで目の前に晒された首筋にキスを落とすと、また獅子谷は小さく震える。
「こんな感じやすい身体なのに?」
「っ、あっ……知らねぇよ!お前だとやたら……んっ!!」
首筋を舌でなぞって耳朶を軽く食むだけで漏れる吐息。
そのまま耳の中に舌を這わせると、獅子谷はピクピクと身体を跳ねさせた。
「俺だと特に感じちゃうのか?」
そんなの嬉し過ぎて聞かずにはいられない。
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