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亮雅の姿は見失って、今日は!と頭を切り替えた俺。
電車に乗って獅子谷のアパートがある駅で降りると、そのまま歩いた。
こうやって一人でただ歩いていると、獅子谷のアパートまでは結構距離がある。
ボロい上に交通の便も悪くて、近くにスーパーや銀行など便利なモノもない。
駅を出たとこにコンビニがあった程度で店もほとんどなかった。
学校から近いわけでもないそんな場所……尚更こだわる理由がわからない。
「おっ!お前さんは!」
声を掛けられて顔を上げると、伸びた髪を避けてニヤリと笑われて思わず睨んでしまった。
「おーおー!怖ぇな!昔のレオくんみてぇじゃねぇか」
相変わらずの伸びたヒゲと髪。
決して清潔そうには見えないその姿に軽く拒否反応をしてしまう。
「今日はレオくんと一緒じゃねぇのか?恋人かと思ってたのに、違うのか?」
更にニヤつかれて胸ぐらを掴みかけるのを必死で堪えた。
こいつに何度も言われて獅子谷は怒っていたのかもしれない。
だが、何かが引っ掛かって考える。
「若い奴らの聞いて、勒太 も久々に反応しやがったのになァ」
ケラケラ笑われて、
「おい!じじい!」
思わず俺もそいつを呼び止めてしまった。
さっきからこいつの言葉を聞いているとまるで……。
「うち来るかァ?汚ねぇけどよ!」
本当に汚いだろうことは想像できたが、ニッと笑うその顔を見て思わず頷いてしまった。
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