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 アパートは全部で四部屋で、その一階、向かって右が勒太というじじいの部屋らしい。  確かにそこは獅子谷の部屋の真下だ。 「勒太ァ!生きてるかァ?」  インターホンさえない玄関でじじいはノックもなくドアを開ける。 「生きてるわ」  中に居たのも年寄りではあるが、俺と一緒に来たヒゲじじいより髪は短髪でヒゲもなく身綺麗ではあった。  布団から身を起こして壁に凭れて座っていて、読んでいたらしい本を閉じるとメガネをクイッと上げる。そして、 「ん?客か?」  俺の存在に気づくと、   「おぅっ!レオくんの!」  ニヤニヤしながらヒゲじじいが親指を立てた。 「へぇ……」  見定められるようなその目に少したじろぐ。  だが、少しだけ会釈をすると、メガネじじいはフッと笑った。 「懐かしいな。昔のレオちゃんが戻って来たみたいだ」  その穏やかな言い方はヒゲじじいとはかなり印象が違う。  室内も布団が敷いてあるだけで物もほとんどなく、汚いという印象はなかった。 「だろォ?こいつがあのレオくんをあんな色っぽくしてたんだぞォ?」  雑にボロボロの靴を脱ぎ捨ててヒゲじじいはズカズカと畳の上を歩いてすぐ布団の側であぐらをかく。 「元智(げんち)……お前のそのデリカシーのなさ」  ため息を吐くメガネじじいの横でヒゲじじいはケラケラと笑った。  そして、そっとその肩を抱き寄せる。 「元智っ!!」 「いいって!こいつだって怜旺くんと、なんだから……な?」  顔をグイグイ押されているのにヒゲじじいはニッと笑ってこっちを見た。

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