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 一緒に獅子谷の部屋に戻ってきて狭いその畳の上で腰を下ろす。 「じじい二人とも居なくなっちまったぞ」 「……だなぁ」  メガネとネクタイを外した獅子谷を目で追うが、獅子谷はどこかぼんやりしていた。 「獅子谷」  立ち上がりつつ、その腰を後ろから引いて抱き寄せる。 「何だよ」 「……これでもうこのアパートに残る理由もねぇんじゃねぇの?」  後ろから顎を捕らえると、獅子谷はフィッと顔を背けた。 「んな簡単に……」 「は?何だよ。まだ何かあんのかよ」  そのまま肩に顎を乗せてしっかり抱き締める。 「別に……もうねぇけど」 「けど?」  聞いてみると獅子谷はキュッと口を引き結んで、それからチラッとこっちを見た。 「……そんな簡単に切り替えられるかよ」  その耳が少し赤くなった気がするのは気のせいだろうか? 「まだじじいたちの思い出に浸りてぇって?」 「そういうわけじゃ……」  後ろからシャツの裾を捲って手を侵入させる。  ブルッと震えた獅子谷を見てクルリとその体を反転させた。 「あのなぁ、もう十一月も半ばだぞ?こんな隙間風だらけのボロアパートで、まともな暖房もねぇ状態で凍死でもする気か!?」 「凍死って……」 「防犯も何もねぇし!引っ越すだけだろ!」  こっちを見ない獅子谷の顎を掴んでこっちを向かせる。  すると、なぜか獅子谷は顔を真っ赤にしていた。

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