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部屋には何もなさ過ぎて飯を食いに外に出て、隣に居る獅子谷の様子を窺う。
口数が少ないのはじじいたちがこの数日で二人共居なくなったからか、それともまだ照れを引き摺っているからか。
「まだ照れてんのかよ」
「照れてなんかない」
見つめたまま尋ねると、獅子谷はフィッとそっぽを向く。
「じゃあ、いつ引っ越すんだ?」
もうグッと伸びをして俺は半ば諦めも混ぜつつ聞いてみた。
「それは……」
やはり口籠る獅子谷。
「それは?」
「……追々」
今日はもう不動産屋だって閉まっているだろうが、土日なら獅子谷も仕事は休みだろうに。
なぜこの土日で動こうとはしないのか。
まぁ、さっき聞いたように意識しているならかわいくて仕方ないのだが。
でも、それでもいつまでも照れて動けないのは困る。
それならばいっそのこと、今からホテルに連れ込んでみるか?
思いつつ、やっぱり付き合ってのハジメテはラブホは嫌だと思ってしまう。
今までの女たちと同じようには扱いたくない。
それに甘くゆっくり時間をかけて繋がりたいしヤった後だって獅子谷をゆっくり抱き締めていたい。
そう思うと、あんなボロアパートでもずっと二人だけの時間を過ごしてきたじじいたちが羨ましい気もする。
「……じじいたちもヤってたのか?」
「あの二人はかなりだぞ」
「えっ!?」
それ以上は突っ込んでも獅子谷はもう何も答えなかった。
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