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 夜のうちにネットで見つけた物件に次の日朝早くから内見に行き、その日のうちに契約をした。  物件の都合上、来週からしか入居できないらしく、それまでうちに居ろというのはどう言っても突っ撥ねられたが。  あんな場所に置いておきたくはないのに…… 「何か入ってきてもブチのめす」  そういうことではないのだが、拳を握った獅子谷もカッコいいと思ってしまうほどの末期症状。  仕方なく引っ越しをする土曜日は泊まることで納得した。  そして、その引っ越しまでの日数をカウントダウンする日々。 「まだ拗ねてんのか?」  またいつものように残っている俺の前の席に座って聞かれて、俺は手を止めた。 「拗ねてねぇよ」 「お前、自覚ねぇのかよ」  普通にしているつもりなのに、獅子谷は俺の眉間に指を当ててくる。 「寄せ過ぎじゃね?久々にクラスの奴らビビってたぞ?」  不意打ちの笑顔にドキッとした。 「……知るか」  そっぽを向くと、獅子谷のため息が聞こえる。 「いい加減、機嫌直せって」 「別に怒ってる訳じゃねぇし……っ!!」  ムッとしてしまいながら振り返った俺の口が塞がれた。  そのまま離れてニッと笑われる。  普段めちゃくちゃ人目を気にするくせにこんなキス……。 「くそ……引っ越しの日、覚えてろよ?」  赤くなったであろう顔を隠して言うのが精一杯だった。

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