181 / 258
181
夜のうちにネットで見つけた物件に次の日朝早くから内見に行き、その日のうちに契約をした。
物件の都合上、来週からしか入居できないらしく、それまでうちに居ろというのはどう言っても突っ撥ねられたが。
あんな場所に置いておきたくはないのに……
「何か入ってきてもブチのめす」
そういうことではないのだが、拳を握った獅子谷もカッコいいと思ってしまうほどの末期症状。
仕方なく引っ越しをする土曜日は泊まることで納得した。
そして、その引っ越しまでの日数をカウントダウンする日々。
「まだ拗ねてんのか?」
またいつものように残っている俺の前の席に座って聞かれて、俺は手を止めた。
「拗ねてねぇよ」
「お前、自覚ねぇのかよ」
普通にしているつもりなのに、獅子谷は俺の眉間に指を当ててくる。
「寄せ過ぎじゃね?久々にクラスの奴らビビってたぞ?」
不意打ちの笑顔にドキッとした。
「……知るか」
そっぽを向くと、獅子谷のため息が聞こえる。
「いい加減、機嫌直せって」
「別に怒ってる訳じゃねぇし……っ!!」
ムッとしてしまいながら振り返った俺の口が塞がれた。
そのまま離れてニッと笑われる。
普段めちゃくちゃ人目を気にするくせにこんなキス……。
「くそ……引っ越しの日、覚えてろよ?」
赤くなったであろう顔を隠して言うのが精一杯だった。
ともだちにシェアしよう!