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182、第22話「引っ越し、そして……」
引っ越しの日は晴れていたがとにかく冷えた。なのに、
「まぁ、十一月の終わりなんてこんなもんだろ?」
薄着のくせにケロッとしている獅子谷が理解できない。
ほとんど何もないあの部屋から午前中にガスやら水道やら立ち会いをして、俺が勝手に選んで届いた家電を設置してもらい、渋谷にアパートの荷物を車に乗せてもらったらすぐに終わった。
「意外と立派だな!じゃ、このまま実んとこ行って安心させてくるな!」
そうやってコーヒーを飲んだらサッと帰ってしまった渋谷。
空気読めて助かる……なんて思っていたら、
「おい」
獅子谷が少し不機嫌で首を傾げた。
「何だよ、コレは?」
「あ?」
指を差されても意味がわからない。
だが、手近にあった冷蔵庫に手をついて睨んできたのを見て笑っておく。
冷蔵庫、電子レンジ、食器棚、炊飯器、ダイニングテーブルセット、テレビボードとテレビ、ソファー、ベッド、布団、洗濯機、掃除機……。
勝手に見繕ったのは聞いたら買わないと言いそうだったからだ。
あんなマグカップしかなかったアパートに住んでいて、新しく部屋を契約したくせに何も買おうとしなかったのを見ていたから。
「これ……全部でいくらだ?」
「さぁ?俺もカードだし」
とぼけておくと舌打ちをされた。
「あのさぁ、ここには俺もちょいちょい居座る気なんだよ。そのために要るもん持ってきただけだろ?」
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